2つのパートソング「雪」「飛べ、歌う鳥よ」――エルガー夫妻の幸福な時代
《雪》作品26-1、《飛べ、歌う鳥よ》作品26-2は、1894年に作曲された女声合唱のための2曲である。いずれも作詞はエルガーの妻アリス・エルガーによる。作曲当時のエルガー夫妻は、後年のような名声や社会的な重圧とはまだ無縁で、二人がそれぞれの才能を寄せ合いながら創作に取り組んでいた、結婚生活の中でも特に幸福な時期にあった。
アリスは単なる「作曲家の妻」ではなかった。エルガーと知り合う以前から文学的な活動を行い、1878年にはコーンウォールを舞台とした叙事的な恋愛物語『イザベル・トレヴィソー』を出版している。この作品の詩句が、後に《雪》と《飛べ、歌う鳥よ》の歌詞として用いられた。
《雪》は、降り積もる雪を人生や魂の象徴として描いた作品である。白く美しい雪は、やがて溶けて消えていく。しかし、雪が消えても魂や心に与えられたものは失われてはならない――。短い作品ながら、静謐な美しさから人生への祈りへと展開する、深い精神性を備えている。特に後半に向かって次第に感情が高まり、最後には「雪のように消え去るのではなく、年月を通して確かなものであれ」という願いへと至る構成は印象的である。
一方、《飛べ、歌う鳥よ》は、愛する人を待ち続ける女性の切実な心情を、飛翔する鳥に託した作品である。森から飛び立ち、遠く西へ向かう鳥に「私が待っている」と愛する人へ伝えるよう願う。明るい自然描写の中に、孤独と焦燥、そして最後には「来てくれ、さもなくば私は死ぬ」という激しい感情が込められている。《雪》が内省的で精神的な作品であるのに対し、こちらはより直接的で情熱的な愛の歌といえる。
この2曲は、もともと2本のヴァイオリンとピアノによる伴奏で書かれた女声合唱曲であり、当初は第3曲を加えた三部作として構想されていた(未完のオラトリオ三部作目、未完の3番目の交響曲と同じように、ここにも3で閉じようとして3で閉じることができなかった・・というエルガーの命題が、奇しくもここにも表れている)。後にエルガー自身が1903年に管弦楽伴奏版を作成し、1904年3月12日、ロンドンのクイーンズ・ホールでこの形による初演が行われた。とりわけ《雪》は、管弦楽化によってその情景性と感情の幅がいっそう鮮明になり、エルガーの合唱作品の中でも特に愛される作品となった。
両曲は、地元の優れたピアニストであり、音楽活動の組織者でもあったハリエット・フィットン夫人に献呈されている。フィットン家はエルガー夫妻と親しく、娘のイザベルは後の《エニグマ変奏曲》第6変奏「イソベル」のモデルとなった人物でもある。この事実からも、これらの作品がエルガー夫妻の交友関係と密接に結びついた音楽であることが分かる。
《雪》と《飛べ、歌う鳥よ》には、まだ「エルガー」という名前が英国中に知られる以前の作曲家と、その妻アリスとの幸福な生活が息づいている。大規模なオラトリオや交響曲とは異なり、どちらも数分ほどの小品である。しかし、そこには後のエルガーを特徴づける抒情性、優しさ、劇的な感情表現、そして英国的な風景感覚の萌芽がすでに現れている。
エルガーの人物像を知るうえでも、この2曲は興味深い。そこに聴こえるのは、偉大な作曲家となった後の「エルガー」ではなく、アリスとともに音楽と文学を楽しみ、互いの才能を支え合っていた一人の音楽家の姿なのである。
雪
おお雪よ、軽やかに沈む雪よ、
茶色い大地は視界から隠される。
おお魂よ、雪のように白くあれ。
おお雪よ、ゆっくりと降り積もる雪よ、
愛しい大地は下でとても暖かい。
おお心よ、 雪の下で
その輝きを保ち続けよ。
おお雪よ、汝の柔らかな墓の中で
冬は勇敢な悲しみの花々を咲かせる。
おお心よ、雪のように慰めと救いを与えたまえ。
雪は溶け、流れ去らねばならない
水の流れのように、速やかに。
しかし、我が魂よ、
汝の賜物を雪のように消え去らせてはならない。
おお雪よ、もはや白くはない、
その輝きも消え去った。
おお魂よ、かつて
雪が輝いていた頃のようにあれ。
あの頃の雪のように純粋であれ、
おお心よ、ただ耐え忍びなさい。
雪のようにではなく
すべての年月を通して確かなものであれ。
飛べ、歌う鳥よ
飛べ、歌う鳥よ、飛べ、
お前の巣が守られている森から、
お前が歌を注ぎ込む木から、
西の彼方へ飛んで行け、
私の愛する人に私が待っていると伝えてくれ、
ああ!私はあまりにも長く、孤独に待っている。
飛べ、歌う鳥よ、飛べ、
黄色いサクラソウと淡い水仙が
咲く花咲く草原の上を。
アネモネが咲く場所で私は待っている、
疲れ果てて待ち続ける、
待ち続けることに 疲れ果て、
そして疲れ果ててため息をつく。
飛べ、歌う鳥よ、飛べ、
森の中の孤独で誰にも求められない巣を離れよ、
ゆりかごのような枝を離れ、翼を広げよ、
そして私の後を追う思いのように速く
前進し、速く飛び続けよ、歌い続けよ、
来てくれ、さもなくば私は死ぬ!




