ウッド・マジック・・・最大の悲しみ

愛の音楽家エドワード・エルガー

映画「ター」について

クラシック音楽を題材にした映画として注目は集めた「ター」。
一見した感じは、初心者には優しくない映画だなというのが第一印象。
観客ターゲット層は誰なのか?いまいちよくわからない。
ポンポン飛び出すクラシック音楽関連の固有名詞の数々。
そもそもクラシック音楽知らない観客のことを全く想定していない。
レヴァインとデュトワのスキャンダル事件なんかもサラっと出てきたりとか・・・。この事件のことやら、レヴァインとかデュトワを知らないと何のことやらサッパリになるだろう。その事件の説明もされることもない。
まずそこが理解できなければ開始早々に置いてきぼりを食らって2度と戻ってきてはもらえない。
クラシック音楽に興味ない人が観たら、あの業界専門用語オンパレードどこまで理解できるのだろうか?というのがあまりにも多い。
セリフで「DGが」とか、字幕では「グラモフォンが」とか何度もサラっと出てくるが、クラシック音楽ファンならすぐ「ああ、ドイツグラモフォンね」とすぐ理解できるが、一般ピーポーにとってはなんじゃらほい?って感じ。

 

それを乗り越えたとしても、ストーリーが一筋縄では行かない(ストーリー自体は単純なのだが)。
一度観ただけでは細かい部分の理解が追いつかない。
印象としてはダークなストーリーが淡々と続く。
心理描写や抽象的表現が続き、主人公ターが観ている夢なのか幻覚なのか現実なのかわからなくなる。
今回の主役ターを演じたケイト・ブランシェットが、かつて演じた「エリザベス」もこんな感じだったし、何よりもホアキン・フェニックス主演のDC映画「ジョーカー」のテイストが似ているのだ。
あの「ジョーカー」を楽しめた人は「ター」も面白く観れるかもしれない。
まるでベルリンの街がゴッサムシティに見えてしまったほど。
ジョーカーの闇落ちとターのサクセスストーリーの崩壊の仕方が正にシンクロして見えてしまう(キャンセルカルチャー)。
奇しくも両作品の音楽を担当したのはヒドゥル・グドナドッティルというのも奇遇ではある。とにかくダークで落とし所がよくわからない映画である。
演出の手法がホラー映画っぽいのでホラー苦手な人はやめた方がいいと思う。クローズアップはしていないけど明らかに「幽霊」を登場させている。
それこそ「心霊動画」っぽく。つまり主人公ターは気づいていないだけで彼女の周りで起こる不可解な現象が実は霊障であることを暗に描いているのである。
そのうち出てくるだろうと思わせておいて劇中に起こる不可解な怪現象が誰の仕業なのかが最後まで明かされないまま終わる(ヴィランの存在を匂わせておいて結局その存在が明かされない)。要するにこれ正にターの視点からの描写なので本人が「それ」の存在に気付いていないということになるのだ。
つまり、この狭義の視点からしか見えないイコール現代のSNSを通してしか世界が見えない・・・という現代社会の視点をも表しているといえるのである。
結構深いかもしれないこの映画。

 

個人的にツボの一つだったのが、ソフィー・カウアー演じるチェリストのオルガ・メトキナがエルガーのチェロ協奏曲をyoutubeでデュプレの演奏に感動したというくだり。
それに対してターが「ああ、バレンボイム指揮の演奏ね」というと「指揮者は誰だが知らない」と答える。バレンボイムなんてどうでもいいと言いたげな演出が憎い。これは笑った笑った。

 

 

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