愛の音楽家エドワード・エルガー

「本当の音楽は155番以降から始まる」

「本当の音楽は155番以降から始まる」
エドワード・エルガーが交響曲第2番に関してジョン・バルビローリに語った言葉である。
交響曲2番4楽章の終盤、曲は静かに収束へと向かう中、弦楽器群やハープなどの美しいアルペッシオに彩られる。
聞こえてくる音楽の美しさのみならずスコアに書き落された視覚的な美しさも筆舌に尽くしがたい。
エルガーの音楽の特徴の一つが第一楽器群と第二楽器群の掛け合いが多いことである。
エルガーの時代のオーケストラの配置は、いわゆる両翼配置と呼ばれるものがスタンダートだった。
客席から向かって左側に第一ヴァイオリン、右側に第二ヴァイオリン。掛け合いでは最初に奏でたメロディが第一ヴァイオリンで弾くと客席からは左側から音が聞こえる。
そのテーマを第二ヴァイオリンが引き継いだり、または呼応したりすると客席から右側から音が聞こえる。
エルガーが多用したこの方法だと音が左右でやりとりする立体的音響な面白さがあるわけである。
エルガーはこれを狙ってこういう書き方をしている。
ところが、ストコフスキー・シフトと呼ばれる対向配置にしてしまうとこの効果は死んでしまう。
ストコフスキー・シフトでは客席から見て第一ヴァイオリンが左側にいるのは変わりないが、第二ヴァイオリンは右側でなく第一ヴァイオリンのすぐ隣。
これではエルガーが意図した効果が得られない。
そもそもエルガーの時代にはこのストコフスキー・シフトは存在していなかったのだから。
なのでエルガーの交響曲を演奏するのに両翼配置で演奏しないオーケストラの演奏は非常に萎える。
エルガーが「こうして欲しい!」という希望を無視しているわけであるから・・・それ以前にそんなことすら知らないケースもあるが・・・。
そこはエルガーの意図を汲んで演奏してもらいたいものである。

 

「本当の音楽は155番以降から始まる」

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