愛の音楽家エドワード・エルガー

愛の音楽家エドワード・エルガー

エルガーのヴァイオリン協奏曲2023その①

 

2023年5月14日 東京芸術劇場

 

読売日本交響楽団 第257回 日曜マチネシリーズ

 

沖澤のどか指揮、三浦文彰独奏

 

エルガー ヴァイオリン協奏曲 ロ短調 作品61

 

エルガーのヴァイオリン協奏曲2023その①

 

ジャッジは以下のようになった。
基準となるものは、技術はもちろんのこと、エルガー作品への共感度。過去の名演奏の数々、エルガー指揮メニューイン独奏盤やボールト指揮、メニューイン盤やデイヴィス、ハーン盤などが比較対象になるので厳しいものになるのであるが、現状の日本におけるエルガー需要度を勘案して多少調整しななければならないという考慮点もある。
指揮者、独奏者、オケはもちろんのこと。座った席による聞こえ方の違いによる調整、観客の質(例えばフライングブラボーやられたりとか客席で携帯電話が鳴らされたりしたら減点対象)、さらにスタッフ部門の質(パブリシティ。プログラム解説とかプレトークの内容は適切か?など)を加味してジャッジするものである。
観客の質を含めるのは、名演奏とは観客も共同で作り上げるものだと思うからである。
またスタッフ部門の質というのも、コンサートとは、プレイヤーとスタッフが一緒に作り上げる共同作業だからである。パブリシティの良し悪しでコンサート全体の印象を左右するという局面はよくあることなので。
1.ConductorはVery goodの4点。オケも含めてこの曲自体初めての演奏とのこと。独自の解釈も込めて健闘していたと思う。何かをやろう!という意気込みは伝わってきた。良し悪しではなく、第一楽章最後の大きなリタルダント(まるで歌舞伎役者が大見得を切るかのごとく)とか第三楽章での極端なテンポ設定など、どういう意図からの解釈なのかとても興味がある。過去誰もやっていないユニークなスタイルである。ただ、後半プログラムのワーグナーとシュトラウスを聴く限り、この人はそちらのドイツ系の方が圧倒的に得意なのだろうなとは感じられた。
2.SolistはGoodの3点。この曲をプログラムに熱望していたのは三浦文彰本人とのことなので、その意気込みは十分に感じられた。やはり、これも良し悪しではないのだが、解釈の根拠にとても興味がある。こちらもかなりユニークなことをやっていたので。第一主題でのトリル?というか微妙な装飾音?とか。オリジンは一体どこにあるのか?師匠であるズーカーマンは確かやっていなかったと思う。第二主題、いわゆるウィンドフラワーのテーマでのスタッカート気味というか、拍間での微妙な「溜め」とか。
また第三楽章の細かい動きでのスラー。確かにスラーの指示はあるが、過去のどの演奏よりも極端に聞こえる。嫌いではないが、なぜそういう解釈になったのだろう?とても興味がある。
ウィンドフラワーテーマの表現は昔の竹澤恭子に似ているし、第三楽章の堂々とした歩みはイダ・ヘンデルを思わせる。この人があと10年くらいこの曲を温め続けたらきっと凄い演奏を成し遂げるであろう。
3.OrchestaはVery goodの4点。読響というとピアニシモがあまり綺麗ではないオーケストラという印象を持っていた。ジェフリー・テイトや尾高忠明をしてもエルガーサウンドを引き出すことが出来なかった過去の印象。しかし今回はとても抑制の効いた美しいピアニシモを聴かせてくれた。沖澤のどかのコントローラが素晴らしかったのだろう。
4.Seat locationはGoodの3点。
3階席の後方なので期待はしていなかったが中々音がよく聴こえた。思ったほど悪くはなかった。ステージ向かって左側席を選んだ。それはソリストの音を真正面から聴くため。協奏曲の場合はこのロケーション条件を踏まえて席を選ぶと良い。
6.AudienceはVery goodの4点。
ブラボーが解禁になって、フライングが心配だったが、その心配は無用であった。この渋めのプログラムで約9割客席が埋まった。基本的には東京の会場の観客は信頼できる(・・はず。時々裏切られるけど)。今回はとても良い雰囲気だった。
7.PablicityはGoodの3点。プログラム解説は可もなく不可もなくの超安全運転。作品の背景などに深く踏み込むこともなく表面をサラっと触れるだけの淡白なもの。プレトークもなしだったのでこんなものか。
集計すると30点満点中の18点。
100点満点換算にすると60パーセントということになる。
参考までに昨年の東Cフィルの高関、竹澤の演奏を同じ基準で判定したら30点満点中19点で63パーセントになった。
さて、7月の東京交響楽団のノット指揮、神尾独奏の同曲はどうなるであろうか。

 

エルガーのヴァイオリン協奏曲2023その①

第一主題出だし

 

 

 

エルガーのヴァイオリン協奏曲2023その①

第二主題ウィンドフラワーのテーマ

 

 

 

 

エルガーのヴァイオリン協奏曲2023その①

第一楽章最後。リタルダントの指示は書かれていない。

 

 

 

 

エルガーのヴァイオリン協奏曲2023その①

第三楽章冒頭。確かにスラーの指示にはなってはいるが・・。

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