誕生・・・赤レンガのコテージ

愛の音楽家エドワード・エルガー

誕生・・・・赤レンガのコテージ

誕生・・・赤レンガのコテージ

 

 エルガー家とウースターとの関係の始まりは1841年まで溯る。この年、エルガーの父ウィリアム・ヘンリー・エルガーは、19歳でウースターへとやって来る。この地で楽器商を営み、同時にピアノの調律などを行っていた。ウィリアムはミールチーペン・ストリートに住所を置いていたが、ここで後に妻となり、エドワード・エルガーの母となるアン・グリーニングと出会う。

愛の音楽家エドワード・エルガー

 そしてエドワード・ウィリアム・エルガーの生まれる1年前、エドワードの両親ウィリアムとアンは、ウースターの西の郊外ブロードヒースにある小さなコテージを借りた。赤レンガ造りの小さな2階建てのコテージは、「ザ・ファーズ」と呼ばれており、周りを豊かな自然な囲まれた静かで非常に美しいロケーションにあった。1857年6月2日、夫妻の間に生まれた7人兄弟姉妹の4番目の子供としてエドワードはこの世に生を受ける。
誕生・・・赤レンガのコテージ
 父のウィリアムはウースターのハイ・ストリートで楽器店を経営しており、普段は店の2階に住んでいたが、週末は決まってこのコテージで過ごすことにしていた。両親に兄のハリー、2人の姉ルーシーとポリーの6人家族には、このコテージでは手狭になったので、一家は自分たちの楽器店の近くエドガー・ストリート1番地に引っ越すことになった。しかしエドワードにとっては、生涯このコテージとそれを取り巻く環境が彼の創作活動に大きな影響を及ぼし続けることになる。

愛の音楽家エドワード・エルガー

 1863年エルガー6歳の時、家族はウースターのハイ・ストリート10番地にある楽器店の2階に転居した。エルガー一家はローマ・カトリック教徒で、近くのセント・ジョージ教会に毎週日曜日に通っていた。父ウィリアムは、教会でオルガンを弾いていたのである。また一家は度々家庭音楽会を開催するなど、かなりの音楽好きであり、このような音楽的に豊かな環境にあったエドワードが、自然に音楽に親しんでいったのも当然のことだろう。特に楽器には特別な才能があったようで、店にある楽譜を読みあさり、片っ端から楽器を演奏することにより自然に演奏法を身につけたという。「父の作った音楽的環境の中で私は音楽について様々なことを学んだ。店にあるもので、可能な限り、読み、演奏しまくった」
 エドワードは兄弟とよくブロードヒースを舞台にした自作劇を作って自分たちで上演しており、その劇の付随音楽をエドワードが担当した。1867年10歳の時には《ユーモレスク・ブロードヒース(Humoresque Broadheath)》を作曲している。これは1907年に作曲される《子供の魔法の杖(The Wand of Youth, Suite op. 1)》第1組曲の7曲目として後に組み込まれることになる。これがエルガーの曲として辿れる最初期の作品である。これらの幼少時代の体験が《スターライト・エクスプレス》や《子供部屋》、《夢見る子供たち》といった晩年のノスタルジー志向に溢れた作品を後に産み出すことになる。
 また、1866年にはウースター大聖堂で「スリー・クワイヤ・フェスティヴァル」が開催され、当時9歳のエルガー少年は、初めて大編成のオーケストラを聴いて大変な感銘を受けたという。エルガー自身もこの合唱祭に積極的に関わるようになるのだが、オーケストラに参加して1884年にはアントニン・ドヴォルジャークの指揮により《交響曲第6番》と《スターバト・マーテル》を演奏している。これらの体験が後のエルガーのオラトリオ作品に強い影響を与えることになる。その後このフェスティヴァルに委嘱されて作曲したり、また彼自身が指揮したりと、生涯に渡ってエルガーとこのフェスティヴァルは関わりを持ち続けた。

 

 

〔参考CD〕
*《ユーモレスク・ブロードヒース》 マッケラス指揮/ウェールズ・ナショナル・オペラ管ほか《子供の魔法の杖》から
 1907年にエルガーは第1組曲と第2組曲から成る《子供の魔法の杖》を作曲している。エルガーのノスタルジックな作風は、この作品から始まっており、《スターライト・エクスプレス》などにこの作品からの引用が見られる。第2組曲の終曲「野生の熊(The Wild Bear)」は、コンサートのアンコール・ピースとして単独で取り上げられることもあるエルガーのお気に入りの曲で、ポウィック病院のために書かれた《5つのカドリーユ(Five Quadrilles)》の中にその原型を見ることができる。
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もくじ      音楽への夢

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