オルガンソナタ1番の管弦楽版

愛の音楽家エドワード・エルガー

オルガンソナタ1番の管弦楽版

オルガンソナタ1番の管弦楽版

 

 

マッケラス指揮による序曲コケイン。実に堂々たる演奏で輝かしい音の響き、さらに賑やかな金管としなやかに紡ぎ出される弦の響きが絡み合いロンドンの街角に溢れる活気をよく表しているかのようだ。
特に最後の部分では壮麗なオルガンが響き渡り、実に絢爛堂々と締めくくる。やはりこの曲はオルガン入りに限る(スコアにオルガンの指定があるが演奏者の都合によってオルガンが省かれるケースも多い)。

 

メナによるエニグマ変奏曲も、第1曲でのデリケートで繊細な出だし、第7変奏トロイテでの賑やかさ、さらには第9変奏ニムロドでの憂いに満ちた表現から始る優しく愛に溢れた表情といい実に素晴らしい展開で進んでいく。
しかし、終曲第14変奏にEduに入るとなぜか、この楽章だけが極端にテンポアップされてしまう。ここでテンポを上げる理由がわからない。
そういう解釈なのかもしれないが、これだけはいただけない。最後に最高潮に盛り上がるのでテンポを速めたい気持ちもわからなくもない。
ただそれをやってしまうとそれまでの展開との整合性が取れなくなってしまうのだ。例えば、第14変奏では第1変奏で登場したエルガーの妻アリスのテーマと第9変奏ニムロドが登場する。これらが再登場した時に最初に提示されたものと明らかにテンポが違ってしまって違和感が目立ってしまう。この点だけが本当に惜しい演奏である。

 

ハンドリー指揮によるオルガンソナタ1番の管弦楽版はさすがとしかいいようがない。
そもそもこの管弦楽版ソナタを録音しているのはハンドリーとヒコックスだけ。それもハンドリーはこれが2種類目の録音なのだ。
つまり彼が得意とする演目。
エルガーの曲相の代名詞ともいわれる用語がノビルメンテ。「高貴な」といったような意味だ。
あの有名な行進曲「威風堂々」第一番(1901)のトリオのメロディを思い浮かべていただければイメージがつかめると思う。
エルガーはこの言葉がとても気に入っており、この言葉を楽譜に多く書き込んでいる。
しかし、意外にも「威風堂々」1番の楽譜にはノビルメンテという言葉は書き込まれていない。
エルガーが初めてノビルメンテという言葉を書き入れたのが、この「威風堂々」1番の直後に作曲された序曲コケイン(1901)であった。
たまたまそれ以前にはこの言葉が思い浮かばなかっただけだと思う。
しかし、1895年に作曲されたオルガンソナタ第1番は、エルガーが最初にノビルメンテという言葉をあてはめたであろう作品である。
オルガンのソロ用に作曲されたものであるが、そのシンフォニックでダイナミックな曲風は正にエルガーが本来やりたかったであろう要素がこの管弦楽版によって実現されているのではないだろうか?
この初期の作品には後の交響曲や威風堂々に繋がる正にノーブルな曲相、さらには愛の挨拶や朝の歌に代表されるようなエルガーらしい優しさにあふれた曲相も見られる。
ゆえにこの管弦楽版オルガンソナタが別名交響曲第0番と称されるのも十分頷ける。

 

Edward Elgar
Cockaigne Overture
BBC Philharmonic,
Charles Mackerras (conductor)
Variations on an
original theme ‘Enigma’
BBC Philharmonic,
Juanjo Mena (conductor)
Organ Sonata
BBC Concert Orchestra,
Vernon Handley (conductor)

 

Track 1 recorded live at the BBC
Proms, 25 July 2009
Producer: Mike George
Recording engineer: Stephen Rinker
Tracks 2-16 recorded live on 20 April
2012 in the Victoria Hall, Hanley, UK
Producer: Mike George
Recording engineer: Stephen Rinker
Tracks 17-20 recorded live at the
BBC Proms on 22 July 1995
Producer: Tim Thorne
Production, editing and mastering:
Jennifer Howells, Tim Thorne

 

BBCMM423 DDD STEREO P & C 2018 BBC
http://tower.jp/item/4739160/BBC-MUSIC-2018年6月号

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