BBC開局75周年記念の《ゲロンティアスの夢》DVD

愛の音楽家エドワード・エルガー

BBC開局75周年記念の《ゲロンティアスの夢》DVD

 

 

 

 

 

 BBC開局75周年を記念して1997年11月26日、セント・ポール大聖堂にて《ゲロンティアスの夢》の演奏が行われた。指揮はサー・アンドルー・デイヴィスでオーケストラはBBC交響楽団、合唱はBBC合唱団、メゾ・ソプラノはキャサリン・ウィン・ロジャース、テノールはフィリップ・ラングリッジ、バリトンはアルステアー・マイルスという面々だった。
 普段「プロムス・ラスト・ナイト」でのショーマン・シップ姿を見慣れているアンドルー・デイヴィスだが、ここでの彼は全く違う一面を見せてくれている。真剣に作品に向かい合い、そして作品とエルガーに対する尊敬と愛情の念が溢れるばかりに感じられるのだ。こんな真面目な顔をしているデイヴィスは初めて見た。15歳の時に、ロイヤル・アルバート・ホールでバルビローリによる演奏を聴いて感銘を受けたとデイヴィスは語っているだけあって、そのバルビローリの演奏に迫る素晴らしさである。
 残響効果を計算に入れてか、遅めで丁寧な進行の中にも盛り上げるところは大胆に突き進む。独唱者たちも最初はノリの悪いところも見受けられるが、第2部になると俄然熱がこもってくる。特にゲロンティアス役のラングリッジは、第2部の終盤「Take me away!(私を連れていって下さい)」での、ここで命果てても構わないとでも言わんばかりの熱唱が凄い。天使役のロジャースも往年のデイム・ジャネット・ベイカーを彷彿させる豊かな包容力を持っている。ロジャースはハンドリーとも組んでこの曲を録音しているが、その時よりも更にこの曲の核心部に迫っているのではないか。
 ライブのため、多少演奏のキズはあるものの完成度という点では評価が高い。特に映像の演出面でも感心させられることが多く、制作側がこの曲の細部までよく知り尽くしているということがわかる。
 例えば、セント・ポール内の彫刻や肖像、ステンド・グラスなどを、まるでプロモーション・ビデオのようにうまく曲とシンクロさせている点。また、第2部の壮大な合唱曲「Praise to the Holiest in the height, And in the depth be praise(崇高なるところ、また深淵なるところにて、最も聖なる神をほめ讃えなさい)」という言葉が歌われる場面は、必ずドームの全景にカメラをパンさせることによって詩の意味に説得力を持たせるという技法。そして、終曲の「天使の告別」から曲の終わりにあわせてカメラを引いてゆき、ちょうど曲が終わった時点で十字架をクローズ・アップで写す。これをワン・カットで行うという見事さ。
 また冒頭では、この曲の作曲された家「バーチウッド・ロッジ」のロケが入り、ジェロルド・ノースロップ・ムーア氏の解説を入れるなどドキュメンタリー的価値も高いのだ。

 

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