グレート・モールヴァンの街

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ベルビュー・テラス(Belle Vue Terrace)

グレート・モールヴァンは、エルガーの音楽が生まれた場所である以前に、エルガーという人間が音楽とともに生きる術を学んだ街である。ここでは、私生活と職業、成功と挫折、記憶と現在が、常に同じ視界に収まっている。だからこそエルガーの音楽は、壮麗でありながら決して抽象化されない。常に「誰かが住んでいる街の音」として、現実に足をつけて鳴り続けるのである。

 

グレート・モールヴァンという街は、エルガーにとって単なる居住地でも、風光明媚な保養地でもない。ここは彼が作曲家として社会の中に立つとはどういうことかを、身体的に、具体的に学んだ場所である。ロンドンのように匿名性に守られた都市でもなく、ブロードヒースのように私的記憶に閉じた原風景でもない。モールヴァンは、常に「人の目」があり、「共同体」があり、そして音楽が日常の中で鳴っていた街だった。グレート・モールヴァンの中心地。チャーチ・ストリートとウェルズ・ロードがクロスするあたりの場所で、様々な店舗、ホテルなどがここにある。

 

ベルビュー・テラス――エルガーが「現在形」で立つ場所

 

ベルビュー・テラスは、今日のグレート・モールヴァンの中心であるが、その象徴性は単なる地理的中心性にとどまらない。2000年に設置されたエルガー像と「エニグマ噴水」は、エルガーを記念碑的存在としてではなく、街の生活空間の一部として配置するという、きわめて意識的な選択の結果である。5月26日、この場所に新しいエルガー像とエルガーをモチーフにした「エニグマ噴水」が新設された。除幕式には、デューク公が列席し、マラト・ビゼンガリエフによるヴァイオリン演奏も行われた。この等身大のエルガー像は、1905年頃のエルガー壮年期の姿をモデルとしており、ローザ・ガラードの作による。

 

柵も台座もない等身大像は、偉人を仰ぎ見るためのものではない。むしろそれは、「今もそこに立っていそうなエルガー」を再現する試みであり、モールヴァンが彼を過去の英雄ではなく、現在進行形の住民として記憶していることの証左である。ウースターの像と同様、ここでもエルガーは街に溶け込んでいる。これは、彼が生涯にわたって「地方に属する作曲家」であり続けたことへの、最も誠実な顕彰の形だろう。

 

グーグルマップ

 

 

ツーリスト・インフォメーション(Tourist Information)

グレート・モールヴァンの街

  ベルビュー・テラスにあるツーリスト・インフォメーションの重要性は、実用的な意味を超えている。一般的な観光ガイドがエルガーを表層的にしか扱わないのに対し、ここにはローカルな記憶として蓄積されたエルガーが存在する。市や観光局が発行する非売品の資料群は、エルガーが「国民的作曲家」になる以前、そしてなった後も、どのようにこの街と関係を保ち続けたかを示す一次的証言に近い。

 

つまり、エルガー理解は、ここで初めて「観光」から「調査」へと切り替わる。モールヴァンは、受動的に眺める場所ではなく、能動的に歩き、聞き、確かめる街なのだ。以前はチャーチ・ストリートを少し下った地点にあったのだが、現在は移転されてこちらに移った。一般のガイドにはエルガーのスポットに関する情報はほとんど載っていないので、インフォメーションのスタッフに聞いた方がよい。その他、観光局やウースター市から出ている資料も大変貴重で、一般に市販されていないものなので要チェックである。

 

 

 

 

 

プライオリー公園(Priory Park)

グレート・モールヴァンの街

  チャーチ・ストリートを駅の方面に下った右側にプライオリー公園がある。ここには、もう一つのエルガー胸像がある。これは1950年代にモールヴァン美術学校の生徒であるヒラリー・カルサーズの作品である。しかし、残念ながら、この胸像は一度盗難にあい、現在は飾られていない。胸像は幸いにも戻って来たが、室内に保存されている。

 

 また、公園内には講演やオークション、コンサートなどが開かれるウィンター・ガーデンがある。無名時代のエルガーもよくヴァイオリン奏者として出演している。その後、有名作曲家になってから、このモールヴァン音楽祭で指揮をする機会が何度かありながら結局一度も実現しなかった。1933年の出演予定時には、キャンセルとなりエイドリアン・ボールトが代わりを務めている。

 

 

 

セント・セシーリアホール

 

チャーチ・ストリート沿いのセント・セシーリア・ホールは、エルガーの人生における決定的な一点を示す場所である。1886年、ここでエルガーはキャロライン・アリス・ロバーツと出会う。この出会いは、単なる恋愛の始まりではない。作曲家エルガーが成立するための条件が、ここで初めて揃った瞬間である。

 

アリスは伴侶である以前に、理解者であり、推進者であり、後には事実上のプロデューサーとなる存在だった。その起点が、この街のホールにあるという事実は、モールヴァンがエルガーにとって単なる「風景」ではなく、人生と創作の構造が組み上がる現場であったことを雄弁に物語っている。

グレート・モールヴァンの街

 

グーグルマップ

 
 

グレートモールヴァンのブライアリー公園にあるエルガー胸像が左の写真。この胸像は残念なことに盗難に遭ってしまった。
次に訪れた時は盗まれた後だったので仕方なく自分が胸像になって撮影。
エルガー博物館の副館長だったクリス・ベネット(現エルガー協会セクレタリー)がこの写真を見て笑い転げていたそうな。
ちなみに盗まれた胸像は発見され現在は屋内に保管されているのだそうだ。

 

グレート・モールヴァンの街

 

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