愛の音楽家エドワード・エルガー

愛の音楽家エドワード・エルガー

アンガス・ウェブスターの海の絵

東響交響楽団
東京オペラシティシリーズ 第134回
Tokyo Opera City Series No.134

 

東京オペラシティコンサートホール

 

2023年09月30日(土)14:00

 

出演
指揮:アンガス・ウェブスター 
コントラルト:ジェス・ダンディ

 

曲目
エルガー:海の絵 op.37
Conducted =Very good=4
Soloist=Very good=4
Orchestra =Very good=4
Audience =Very good=4
Seat location=Average=3
Pablicity=Average=3

 

 

まず、最初に意識しなければならないのは、「海の絵」という作品の特異性である。
正味20分少々にして5曲からなる、この規模のソングサイクルならピアノ伴奏でよいではなかろうか?とも思える。
そこをあえてフル編成のオーケストラに加えてオルガンまで(今回の演奏ではオルガンは割愛)入るという大規模編成。
ブラームスのアルトラプソディを意識したものであるとか、エルガーの芸術的最高点がどうしても管弦楽作品であるというポリシーがあるからなど、理由は色々あるのであるが、最もポイントとして大きいのはクララ・バットという歌手の存在ではなかろうか?実際この曲は彼女に献呈されている。
この曲の初演を務めたコントラルト歌手のバットの歌声は非常に力強いものである。残された録音は、音質の悪い古いものであるが、その点は充分に伝わる。
その力強い低音はしばしば男声テノールが歌っていると勘違いされるほど。
エルガーは、バットの歌声をかなり買っており、「海の絵」と「ゲロンティアスの夢」の天使役は、このバットが歌うことを想定して作曲したフシが見られる。
それゆえ、曲中に現れるコントラルトの低音部は、並の歌手なら、オーケストラの厚い音量にかき消され全く聴こえなくなる。
「この曲を歌える歌手がいない」と言われる所以はここにある。それゆえ、取り上げられる機会も限定されてしまうわけだ。
クララ・バット以降ではジャネット・ベーカーやフェリシティ・パーマーあたりが追従してはいるものの、それ以外に適任者が見当たらないのが現状。
もしマリリン・ホーンがこの曲を歌ったらさぞや凄かったろうとは思うが、残念ながら彼女がこの曲をレパートリーにすることはなかった。
さて、今回のジェス・ダンディはよくぞ見つけてきた!と感心してしまった。エルガーが意図したものを再現するには、声量的には申し分なかろう。
今回聴いた座席がステージ右側で声楽を鑑賞するにはやや不向きなロケーションだったので正面から聴いてみたかった。
指揮者ウェブスター、東響ともに快適な演奏で聞かせどころも十分に抑えたドライブだったように思う。
この馴染みのない(日本では)作品ではあるが聴衆も身を乗り出すかのように演奏者の解釈についていこうとする姿勢も感じられてとても好意的なマナーであった。
パブリシティ面でも曲目解説は、やや無難な路線ではあるものの、先に述べたクララ・バットの件が言及されているので良しとしたい。
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