愛の音楽家エドワード・エルガー

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エルガーとショーファー

エルガーとショーファー

エルガーのオラトリオ「使徒たち」The Dawnでユダヤ教の典礼で使われる角笛ショーファー(ショファール、ショファルとも表記されることも)が、イエスが最後の晩餐の前夜明けに弟子たちを招集する場面で登場する。
ただ、この部分を実際のショーファーで演奏することは少なく、普通はフリューゲルホルンなどで代用される。

 

聖書の記述にある「ラッパ」「チューバ」「角笛」と書いてあるものは一般的にショーファーのことを指している場合が多い。

 

 

しかし、カトリックのエルガーがなぜユダヤ教のショーファーを「使徒たち」に使おうと思ったのだろうか?

エルガーとショーファー

以前にカトリックの教会ではミサでショーファーを使うところがある・・・というような記述を目にしたことがあったので
おそらくエルガーが幼少の頃から通っていたウースターの聖ジョージ・ローマ・カトリック教会のミサでショーファーが使われることがあり、それをエルガーが目にしていたのだろうと思っていた。
ところがカトリック信者の友人に尋ねたところ、カトリックでショーファーが使われる例はあまりないらしいということがわかった。
むしろプロテスタントの教会で使われるケースの方が多いかもしれないということだった。
その後の追加情報で福音系のキリスト教会でショーファーが使われることがあるらしい・・・。
ということは、立てた仮説が崩れ去ったわけで1から出直しとなった。
マイケル・ケネディ、ジェロルド・ノースロップ・ムーアといった世界のエルガー研究者もあまり関心がないのか、この点を言及している資料が見つからない。
ごく表面的な解説しか見つからないのだ。
エルガーとプロテスタント。さらにはエルガーとユダヤ教。
ほとんど接点がないと思われていたつながりだ。
もちろん聖書にはショーファーのことと思われるラッパや角笛の記述はところどころにある。
エルガーはその点だけを抽出してイマジネーションだけで「使徒たち」に組み込んだのだろうか?
いや、絶対に違う。
なぜなら、テキアー、シェヴェリム、トゥルアーといったショーファーの正式な演奏法をそのまま「使徒たち」に使っている。
実物のショーファーを見聞きしない限りあのように作曲することは不可能だ。
エルガー本人に聞くのが一番早いのだがそれも不可能。
エルガーは作品には使わなかったがエアオリアンハープも所有していた。
意外に変な楽器が好きだったりする。
もし彼が当時、ディジュリドゥを目にしていたらきっと関心を示したと思う。

エルガーとショーファー

 

どうもエルガーは「使徒たち」で使用したショーファー(ショファール)を「最後の審判」でもう一度使う気でいたらしい。考えてみれば「最後の審判」といえば「黙示録」だ。
「黙示録」にはラッパの登場場面がてんこ盛りである。そこでショーファーを使うつもりだったのだろう。

 

ユダヤ教の典礼で使用される場合のショーファーの正式な演奏法は以下のようになる。
エルガーはこれをそのまま「使徒たち」の中で再現している。

 

ショファール(ショーファー)の基本パターン
a.「テキアー」(Tekiah)
とは、一つの長い音です。儀式の始まりの宣言。
主の境界線、支配、主権を宣言します。
Tu ruuuu
b.「シェヴァリム」(Shevarim)
は、二つのトーンからなる長い音です。打ち破りをもたらします。
Turu turu turuuu
c.「トゥルアー」(Teruah)
は短く、鋭い連続した音の繰り返しです。神の栄光を告げ知らせます。
Tututututututututuuu
d.「テキアーグドラ」(Tekiah Gedolah)
「テキアー」(Tekiah)を息の続く限り長く伸ばす。
Tuuuu ruuuuuuuuuuu
エルガー「使徒たち」In the Dawnでのパターン
Tekiah Gedolah  Tekiah Gedolah  Shevarim  Teruah  Tekiah Gedolah
tuuuu ruuuuuuuuuuu tuuuu ruuuuuuuuuuu
Turu turu turuuu Tututututututututuuu 
Tuuuu ruuuuuuuuuuu

 

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