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希望と栄光の国

愛の音楽家エドワード・エルガー

希望と栄光の国

 

 エルガーは語っている。「私は作曲家の仕事を、昔の吟遊詩人のようなものだと考えている。当時は人々の前へ行き歌で活気づけたりしたものだ。今、音楽で何かを祝いたい人がたくさんいることを私は知っている。私はそういう人たちのために作曲をする」
 この言葉の通り、後にエルガーの音楽は王室の行事などの実用音楽として大いに重用されることになる。その中でも最も有名なものが1901年エルガー44歳の時に作曲された行進曲《威風堂々第1番(Military March" Pomp and Circumstance" op. 39)》だろう。原題の《威風堂々=Pomp and Circumstance》は、シェイクスピアの作「オセロウ」の第3幕第3場オセロウに語られるセリフから来ている。
"The spirit-stirring drum, the ear-piercing fife, The royal banner, and all quality, Pride, pomp, and circumstance of glorious war!(魂を打ち鳴らす太鼓、耳を貫く笛の音、そして高貴な旗、栄光に輝く威風堂々たる闘い)"
 《威風堂々第1番》と《2番》は、1901年10月19日リヴァプールにて、アルフレッド・ロードウォルドの指揮、リヴァプール・オーケストラ協会の演奏で行われた。ロードウォルドは、リヴァプールの繊維会社の経営者で音楽にも造詣が深く、エルガーの音楽に傾倒して何かとエルガーへの援助を申し出るなどの、よき理解者だった。それに報いてエルガーは第1番を、彼と彼の主宰するオーケストラへ献呈している。ロンドン初演は、その4日後ヘンリー・ウッドの指揮によりクィーンズ・ホールにて行われた。その時の様子をウッドはこう語っている。「人々は立ち上がって歓声をあげた。私はもう一度演奏しなければならなかった。しかし結果は同じだった。実際、聴衆は私が次の曲に進むのを許さなかった。ただ秩序を回復するために、結局私は都合3回も演奏しなければならなかった」 このようにロンドンの聴衆によって熱狂的に迎えられた。
 特に中間部の旋律は、国王エドワード7世がエルガーに「あなたは世界中の人々が広く口ずさむようなメロディを作曲しましたね」と賞賛し、これに歌詞をつけたらどうか、とまでアドヴァイスを与えている。エルガー自身も大変気に入っていたようで「このようなメロディは人生に一度しか作曲できない」と語っているほどだった。翌年エルガーはエドワード7世の戴冠を祝うために作曲した《戴冠式頌歌(Coronation Ode, op. 44)》の終曲に《希望と栄光の国(Land of Hope and Glory)》というアーサー・クリストファー・ベンソンによる歌詞をつけた。
 これに目をつけた楽譜出版社のブージーは、この《希望と栄光の国》を独立させて売り出そうと考え、作詞家のベンソンと作曲家のエルガーに改作を提案した。こうして、同年には独立した1曲の歌曲として《希望と栄光の国》が完成する。エルガーの指揮、クララ・バットの独唱により1902年6月に演奏が行われた。こちらの方が《戴冠式頌歌》の初演よりも約3ヶ月早かった。この時に改作されたものが今日「プロムス・ラスト・ナイト」で歌われる歌詞と同じものである。
 結局この曲は、トーマス・アーンの《ルール、ブリタニア》、ヒューバート・パリーの《エルサレム》とともに「第2の国歌」のように人々に歌い継がれるようになった。正にエドワード7世の予言通りになったのである。
 しかし、第1次世界大戦では、この曲が国民の戦意をかき立てるための音楽のように歌われる。これはエルガーには辛い事実であった。自分のことを世界のどこよりも早く認めてくれたドイツという、恩義のある国に対する戦争の伴奏音楽に自分の最も愛する曲が使われている、というジレンマを抱かずにはいられなかった。

 

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 《希望と栄光の国》というと4つの曲を指すことになる。1つ目は《戴冠式頌歌》の終曲に歌われるコントラルトと合唱によるオリジナルの形。 2つ目は1902年に改作され独立した1曲で、歌詞も違う。紛らわしいことにこの2つ目のパターンは、1902年にエルガーが編曲したコントラルトと合唱で歌われる形と、191...

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