神奈川フィルのEP3
2014年10月25日の神奈川フィルのEP3。
終了直後のブラボーはあったものの、音が完全に消えてからだったので辛うじてセーフというところか。でもあのブラボーは絶対心からのブラボーではないのがわかるから後味が悪いのが正直なところ。
演奏は、神奈フィルは健闘したのではないでろうか。
やりなれない曲目ゆえ、少々おっかなビックリの部分はあったが、演奏回数を踏めば改善されるはず。果たして再演の可能性はあるのか?
金管はもっと浮き上がらせたほうがよかったところであろう。特に第4楽章ファンファーレの最初の一音トランペットの音が聞こえなかった(席のせいか?)ので重要なテーマが完成しなかった。あそこは思いっきり行って欲しかったところ。
第一楽章の第一主題から第二主題へ移行する際の弦楽器群ももう少し聞こえて欲しかったところ。例の最後の審判あたり。
逆にヴェラ・ホックマンのテーマは非常に美しい。どのオケもここはほんとに綺麗に演奏するなと思う。エルガーらしい部分なので、気持ちをこめて演奏すべき部分である。
あと、多くのオケでは、ほとんど第2、第4楽章で現れるアーサー王のテンポが遅すぎる感がある。原曲はもっとキビキビと速い。おそらく指揮者を含めて、唯一リリースされているアーサー王の録音を聴いたことがないのかもしれない。一度でも耳にすればイメージが掴めるはず。そこの部分が抜けている演奏が多い。
第4楽章は大部分ペインの創作であるが、実演で聞くと構成が非常によくわかる。第4楽章ほぼ全般にわたって「荷馬車」のリズムが鳴っている。正確には「荷馬車」をイメージしたリズムとか曲想。
特に「荷馬車」は4回ほど4楽章の間に現れる。特に、アーサー王が現れる前には必ず荷馬車が現れる。
荷馬車はペインのW・H・リードへのオマージュなので何度も現れるのである。
これは本当にエルガーの作品を隅々まで知っている人間でないと書けない構成であるし、エルガーの曲を隅々まで知っている人なら、そんな構成が見えてくるはず。
湯浅卓夫の指揮では、この点が非常に浮き出された印象があった。
全体的には合格点を上げてもよいのではないかはと思う。
ただ、どうしても絶対に許せないことがある。
演奏のことでもブラボー屋のことでもない。
曲目解説である。
こともあろうに「アーサー王」の作者をバイロンと書いてある!!!!!!。
よりによって高名な音楽学学者のおエライ先生が、ローレンス・ビニヨンの名を知らないわけないのに。
たぶん、推測するに。
英文の原文で「Binyon(ビニヨン)」を「Byron(バイロン)」と早とちりしたのではないかと思われる。
小さなことかもしれないが、絶対に見過ごすことのできない類のものである。
ビニヨンの「アーサー王」があって、その付随音楽をエルガーが書いて、その音楽がこの第3番に引用されているのである。
ビニヨンだってこの作品成立のキーマンの一人なのだ。
いくらなんでもこれではローレンス・ビニヨンがかわいそうだ。
神奈フィルには、日本エルガー協会名義で抗議したが、それに対する返答が実に表面的で事務的なもの。このオケはこういうところが三流だなと感じている。いちいち書かないが、このオケはこれ以外にもやらかしてくれている。キャストはあんなに頑張っているのにスタッフ部門が足を引っ張っている印象である。
神奈フィル事務局に送った抗議文
本日の演奏大変おつかれさまでした。
楽しませていただき感激しております。
一点、パンフレットの解説で致命的な間違いがあります。
こともあろうに「アーサー王」の作者をバイロンと書いてあるのです。
よりによって高名な音楽学学者のおエライ先生が、ローレンス・ビニヨンの名を知らないわけないのに。
たぶん、推測するに。
英文の原文で「Binyon(ビニヨン)」を「Byron(バイロン)」と早とちりしたのではないかと思います。
小さなことかもしれませんが、とんでもないです。
ビニヨンのアーサー王があって、その付随音楽をエルガーが書いて、それが引用されているのです。
ビニヨンだってこの作品成立のキーマンの一人です。
いくらなんでもこれではローレンス・ビニヨンがかわいそうです。
神奈フィルからの回答
水越様 貴重なご意見ありがとうございました。エルガーは国内できちんと理解されているとはいえない状況であることは確かです。今後演奏する際は、国内外の各作曲家の協会と意見交換をしながら、その作曲家の意図する正式な音楽観、そしてその背景をきちんと皆様にご理解いただくこともオーケストラの重要な役割です。今後はそれぞれの協会と密に情報交換をしながら、なおかつ広報活動の一助になれば幸いです。
今後エルガーを演奏する際は、ご連絡させていただきますので引き続きよろしくお願い申し上げます。
その後・・・・
その後、神奈フィルでは度々エルガー作品を取り上げる演奏会があったが、「今後エルガーを演奏する際は、ご連絡させていただきますので引き続きよろしくお願い申し上げます」という返事を頂いたにも関わらずただの一度もオファーがない。結局形だけの社交辞令だったということだろう。
このオケは、これ以外にも、別件で問い合わせ案件があり、「後日事務局からご連絡させていただきます」との返事があったものの、結局連絡はなかった。それ以外にもまだある。
結局、ここのオケは裏方が一番誠意がなくダメだなと感じている。「ベンチがアホだからやってられない」と、かつて発言した野球選手がいたが、その選手の言葉を借りるなら、ベンチがアホだから、頑張っているプレイヤーが気の毒である。