Nobilmente Elgar
Nobilmenteとは「高貴な」とかというような意味合いで使われる音楽用語で作曲家エルガーが好んでこの言葉を楽譜に書き入れたことで知られる。
そのため、このノビルメンテという言葉はエルガーの代名詞ともなっている。
ところが、エルガーがこの言葉を書き込むようになったのは、彼のキャリアの中盤以降のこと。もっと詳しくいうなら1901年以降である。
調べてみたら、エルガーが最初にこのNobilmente と書き込んだのは1901年後半の序曲「コケイン(ロンドンにて)」作品40である。
序盤から中盤に登場する勇壮なテーマ、正にノビルメンテに相応しい曲想だ。
1908年の交響曲第1番と1911年の交響曲第2番も同様である。
ところが・・・、コケインと同じ年(1901年前半)に作曲された行進曲「威風堂々」第1番の、あの最も有名な「希望と栄光の国」と称される部分にはNobilmente と記されていない(molt maestoso の指示になっている)。
不思議ではないか?エルガーの曲でこれほどノビルメンテな曲想はないのではなかろうか?
1894年作曲のオルガンソナタにも同じことが言える。
ここからは想像でしかないのだが、エルガーとしてはコケインを書くまではNobilmente という言葉を思いついていなかったのでは?ということ。
実際、彼がNobilmente の表記を盛んに書き入れるようになったのはコケイン以降の作品群である。つまり行進曲「威風堂々」第1番2番と序曲「コケイン」の間にNobilmenteという言葉を思いついた?
行進曲「威風堂々」においても1914年作曲の4番以降の作品にはNobilmente の指示が書き込まれているのである。
こればかりは本人に聞いてみないとわからないが、おそらくそんなところなのではないか?と想像する。