隠れた名演!五嶋みどりのコンチェルト
2004年ころにFMで放送されたエアチェック音源であるが、五嶋みどりがエルガーのヴァイオリン協奏曲を演奏している。
指揮はアンドリュー・デイヴィスでライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団により、2003年4月25日ライプチヒゲヴァントハウスで行われた。
五嶋みどりのエルガーといえば、フランクのソナタとカップリングされたエルガーのヴァイオリンソナタの名録音がある。
彼女がもし協奏曲も録音してくれたならそざかし素晴らしいものが出来上がるだろうと思っていた。
しかし、なぜか五嶋みどりが協奏曲の録音に手をつけることがなかった。そんな中、ライプチヒでのライブ演奏がFMで放送された時には驚いた。
やはり、予想通りの名演の実現であった。
まず、最初のソロの出だし部分。ここは非情に重要なのである。
ここは、力み弱ぎず丁寧に、なおエッジを効かせた絶妙な表現である。エルガーのパーソナリティの表現としては申し分ない。
最初の出だしの音を少し強めにして瞬時に弱めてそのラインをキープして引っ張る。
衝撃を受けたのが第二主題のウインドフラワーテーマである。
昨年実演で聴いた三浦文彰がやったようなスタッカート気味というか、拍間での微妙な「溜め」。三浦のやった表現のオリジンはここなのかな?とも思ってしまいそう。本来ここはレガートで伸ばすべき部分で、スタッカーは非常にリスクを伴い音楽を台無しにしてしまう可能性がある。
しかし、ここでの五嶋の表現は決してそんなことはなく甘美な香りを維持しつつ、なおかつ毅然とした振る舞いを見せる。
特筆すべきは第二楽章であろう。
この楽章こそ正に五嶋のパーソナリティとエルガーのパーソナリティが重なり合う素晴らしいものとなった。
緩徐楽章こそにエルガーの最大の魅力がある。その魅力を最大限に引き出してみせる五嶋のヴァイオリン。
第三楽章は、それらの要素をキープしつつダイナミックさを加味しつつさらに加速していく。
伴奏のデイヴィスも快適にオケを引っ張り、50分弱の大曲ながらその長さを感じさせないものである。
これ商業録音の実現していないというのは残念である。
ただ、ケチがつくのが演奏の前後に入るパーソナリティと解説者の弁。この曲に対して知識というか思い入れというか興味もないんだなというのがありあり。ギャラを取って仕事としてやっているのなら、もう少し調べろよ・・・・と思ってしまう。
とにかく「カチっと作曲された曲」ということしか言わない解説者。
ヴァイオリン協奏曲はエルガーの作品の中でも極めて重要なポジションを占めており、本国では頻繁に演奏される作品であるのに、日本では滅多に演奏されることがない。今でもそうなのであるが、2004年当時の認知度はもっと低かったわけで、日本におけるそんな受容度の低さを露呈していると思う。
エルガー ヴァイオリン協奏曲 ロ短調 作品61
指揮:アンドリュー・デイヴィス
ヴァイオリン:五嶋みどり
管弦楽:ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
2003年4月25日 ライプチヒゲヴァントハウス