新発見の作品も含めたエルガーの小品集

愛の音楽家エドワード・エルガー

新発見の作品も含めたエルガーの小品集

新発見の作品も含めたエルガーの小品を集めたDuttonからのリリース。
エルガーファンには特別の愛着を持って迎えら入れられること間違いないであろう。
1881年作のエアーから1933年作のミーナまで作曲順に並べられていることによってエルガーの作曲様式の変化を感じることができる。(SACDだけで聴くことができるボーナストラックに収められたファルスタッフを除いて)
中でもプレミアの一つとなるカントポポラーレの小編成オケ版のチャーミングでプリティかつ詩情あふれる演奏は今回最大のハイライトといえるだろう。
エルガーのメロディメーカーたる所以を遺憾なく感じさせるものだ。
ロイド・ジョーンズの情感と共感に溢れた指揮もこの作品の愛らしさを一段と引き出す結果となっている。
もちろん有名な「愛のあいさつ」も収められているので、エルガーという作曲家にあまり馴染みがないリスナーでも十分楽しめるアルバムとなっているのが嬉しい。
エルガーの作曲遍歴を通してみると、例えば宗教的な声楽作品を集中していた時期、交響曲など管弦楽作品に集中していた時期、はたまた室内楽を中心に取り組んでいた時期などと分かれていたりする。
しかし、生涯を通じてエルガーはこのような小品を作曲し続けている。
作品によってはエルガーの成長とともに作風もかなり変化している例も見受けられるのに対してこと小品に関しては一環した作風となっている。
一曲目のエアーと最後のミーナを比べてみても同じような感じの曲となっている。
彼の作曲の原典は彼の幼少期の、あのブロードヒースの情景が変わらずにあり続けたという。
正にそのことが実感できるのである。

 

新たに発見されたエルガーの知られざる作品であるAir de Ballet。
1881年に24歳のエルガーが作曲した小品で、長らく楽譜は失われていたと思われていたのだが、最近、エルガー生家の書庫にて発見されたものである。
エルガーが本格的にオーケストレーションを施した最初の作品ということになる。
当時、エルガーが指揮していたアマチュアのオーケストラのために作曲したものである。
聴いてみると、いくつかの特徴を見つけることができる。
まず、急緩急の編成、ポルカ風の一本調子のシンプルでダンスアブルな作風、そして後のエルガー作品のどれにも似ていない独自性。
そう、これらの特徴はポイック病院のための曲集の特徴そのままなのである。
ポイック病院のためのセラピーミュージックを集めた作品群に極めて近い作品であることが実感される。
エルガーはこの曲を改編して1903年にピアノとヴァイオリンのためのPastourellとして出版している。
Pastourellは、エルガーのヴァイオリンの生徒であるヒルダ・フィットン嬢に捧げた曲である。
ヒルダは、エニグマ演奏曲の第6変奏に登場するイザベラ・フィットンの姉妹。
しかも、よく考えてみると、フィットン姉妹はエルガーがAir de Balletを指揮したアマチュア・オーケストラのメンバーでもある。
エルガーの指揮のもと、ヒルダがヴァイオリンをイザベラがヴィオラを弾いている情景が目に浮かぶ。
まさかヒルダもこの時弾いていた作品を改編したものが自分に献呈されるとは夢にも思わなかったに違いない。
しかもフィットン姉妹の母親ハリエットはもともとピアニストでショパンの弟子に師事していたほど。
エルガーはハリエットにもピアノ曲プレストを捧げている。
さらに、このフィットン一家はロバーツ家とも親しかった。そのロバーツ家の娘アリスをエルガー音楽教室に紹介したのは正にフィットン一家なのである。
その縁がもとでエルガーとアリスは結婚することになる。
いわばフィットン一家はエルガーにとって愛のキューピット役も担ったことになるのだ。
こんな小さな小さな曲なのにこんなにも多くの情報量が込められているのが面白い

 

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