《ゲロンティアスの夢(The Dream of Gerontius, op. 38)》

愛の音楽家エドワード・エルガー

ミュージックバード/ウィークエンド・スペシャル/愛の音楽家エドワード・エルガー〜オラトリオ「ゲロンティアスの夢」

「ミュージックバード
ウィークエンド・スペシャル
5月27日/愛の音楽家エドワード・エルガー~最高傑作オラトリオ「ゲロンティアスの夢」解説
 エルガーといえば「愛の挨拶」、「威風堂々」、そして他には・・・? 意外とまとめて聴く機会は少ないかもしれないエルガー作品ですが、エルガーの最高傑作の一つとも言われているオラトリオ「ゲロンティアスの夢」がこの7月にジョナサン・ノット指揮東京交響楽団によって上演されるのを機に、エルガー作品の魅力に迫ります。スタジオには日本エルガー協会代表の水越健一さんをお迎えしました。エルガーの生涯と代表作をご紹介いただくほか、「使徒たち」に使われているユダヤ教の儀式の4つのメロディーをユダヤ教の民族楽器「ショーファー」で実演、またオラトリオ「ゲロンティアスの夢」を12という数字で読み解いていただきます。エルガー愛に溢れる4時間をお楽しみください。」

 

 

 

ミュージックバード/ウィークエンド・スペシャル/愛の音楽家エドワード・エルガー〜オラトリオ「ゲロンティアスの夢」

 

 

 

 

ミュージックバード

 

 

 

ウィークエンド・スペシャル

 

 

 

愛の音楽家エドワード・エルガー〜オラトリオ「ゲロンティアスの夢」 解説

 

 

 

2018年5月27日(日)20時~24時  再放送 6月2日(土)12時~16時(エルガーの誕生日)

 

 

 

出演:水越健一(日本エルガー協会代表)

 

 

 

 

 

 

 

収録:2018年3月21日 東京FMミュージックバード

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

4時間のうち

 

 

 

●前半 挨拶〜自己紹介〜エルガーの生涯と作品 (音楽1時間20分、お話30分 計1時間50分)

 

 

 

●後半 「ゲロンティアスの夢」の解説 (音楽を交えた解説 約30分)

 

 

 

●「ゲロンティアスの夢」全曲(音楽約90分)

 

 

 

+〆の言葉+クッションミュージック(約10分)

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

・テーマ音楽 希望と栄光の国(リチャード・ヒコックス指揮、ロンドン交響楽団、ロンドン交響合唱団)

 

 

 

・挨拶 

 

 

 

こんばんは。「日本エルガー協会」代表の水越健一です。今日のウィークエンド・スペシャルは、イギリスの作曲家、エドワード・エルガーの特集をお送りします。

 

 

 

再放送の6月2日はエルガーの誕生日。

 

 

 

この夏、エルガーのオラトリオ「ゲロンティアスの夢」がジョナサン・ノット指揮東京交響楽団で上演されます。この作品が日本で演奏されるのはこれで6回目です・・・  

 

 

 

英国エルガー協会会員、日本エルガー協会、「希望と栄光の国」「愛の音楽家」2冊の著書。レコ芸などで執筆。

 

 

 

ディジュリドゥなど民族楽器の演奏家。

 

 

 

それでは、今日はエルガーの生涯と作品、そして最高傑作「ゲロンティアスの夢」の聴きどころをお伝えしたいと思います。威風堂々と愛の挨拶だけではないエルガー。

 

 

 

●前半 挨拶〜自己紹介〜エルガーの生涯と作品 (音楽1時間20分、お話30分 計1時間50分)

 

 

 

1.エドワード・エルガーの生涯と作品について

 

 

 

(曲の前後に曲名と演奏者名をアナウンスする)

 

 

 

 

1857年6月2日-1934年2月23日
 ウースター生まれ ウスターソース、ロイヤルウースターの産地
 独学で作曲をマスター 自然の中 楽器店

 

 

 

1.エルガー/子ども魔法の杖第一組曲(作品1a)から「妖精と巨人」 3:08

 

 

 

サー・チャールズ・マッケラス指揮、ウェールズ・ナショナル・オペラ管弦楽団
     エルガー最初の作品ユーモレスクブロードヒース 後に子どもの魔法の杖に組み込まれた。
 2.エルガー/ミーナ 5:06

 

 

 

リチャード・ヒコックス指揮、ロンドン交響楽団 

 

 

 

    エルガー生涯最後の作品。愛犬の名前。愛犬への愛情。原典に回帰。

 

 

 

エルガーの生涯の時間軸から言ったら前後するが、最初と最期の作品を並べることに意味がある。

 

 

 

 

 音楽なき国 国家事業 王立音楽院

 

 

 

合唱王国、弦楽合奏の伝統、ドイツロマン派の流れ

 

 

 

独学、スタンフォード、パリー、サリヴァン
 父 カトリック教会 子ども劇 ポイック病院(ミュージックセラピー)オルガン
 アリスとの出会い結婚

 

 

 

3.エルガー/ポルカ・ネリー

 

 

 

 バリー・コレット指揮、ルトランドシンフォニア

 

 

 

4.エルガー/愛の挨拶(作品12)3:54

 

 

 

サー・チャールズ・グローブス指揮、フィルハーモニア管弦楽団 
    アリスへの婚約の贈り物として作曲。エルガーの醍醐味は緩徐楽章にあり
5.エルガー/雪(作品26-1) 5:44

 

 

 

リチャード・ヒコックス指揮、ロンドン交響楽団、ロンドン交響合唱団 
    日本ではあまり紹介されていない美しい女声合唱曲。アリスの作詞による。

 

 

 

 宗教曲 英国音楽の伝統 エルガー代表作

 

 

 

6.エルガー/使徒たち(作品49)から夜明け  6:00

 

 

 

サー・エイドリアン・ボールト指揮、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン・フィルハーモニー合唱団ほか 
    マタイ受難曲と同じ世界観、エルガー最長の作品

 

 

 

ショーファーの説明。ユダヤ教の儀式に基づいた演奏。角笛「ショーファー」実演あり

 

 

 

  テキアー(儀式の始まりの宣言)、シェヴェリム(打ち破り、変革など)、トゥルーアー(神の栄光を知らせる)、テキアーグドラー(儀式の最後の時に演奏することが多い)

 

 

 

「使徒たち」でのパターン 実際にショーファーとかユダヤ教の儀式を見ていないと書けないパターンである。

 

 

 

 

 管弦楽こそ至高の芸術 交響曲作曲へ

 

 

 

5.エルガー/エニグマ変奏曲(作品36)からニムロド 4:19

 

 

 

尾高忠明指揮、BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団 
    友人イエーガーのテーマ。ベートーヴェン。葬儀の際の音楽。トロイテの葬儀。

 

 

 

7.エルガー/コンサート・アレグロ(作品46)  11:54

 

 

 

デヴィッド・オウエン・ノリス(P) 
     ファニー・デイヴィス、ピアノ曲。ピアノ協奏曲にしようと思った。ピアノ協奏曲
8.エルガー/交響曲第2番(作品63)第4楽章(モデレート マエストーソ) 12:00

 

 

 

ブライデン・トムソン指揮、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 
     エルガーの本音が吐露されている音楽。一番との比較 。

 

 

 

 名声 戦争 室内楽

 

 

 

 アリス没後 録音活動に傾倒 自作自演

 

 

 

9.エルガー/ピアノ五重奏曲(作品84)第2楽章(アダージオ) 12:51

 

 

 

   シューベルト・アンサンブル

 

 

 

    森の魔法、アリスがとても愛した楽章、アリスの葬儀、晩年のエルガーもレコードで

 

 

 

 

 

10.エルガー/希望と栄光の国 2:00

 

 

 

   サー・エドワード・エルガー指揮、ロンドン交響楽団(1931)

 

 

 

    学校の卒業式で威風堂々1番が演奏されるようになった慣例の起源

 

 

 

 晩年 未完の作品、交響曲3番、スペインの貴婦人、ピアノ協奏曲、威風堂々6番
10.エルガー&ペイン/交響曲第3番(作品88)第4楽章(レント アレグロ) 12:00

 

 

 

尾高忠明指揮、NHK交響楽団 
    あえて第4楽章。エルガー、ビリー、ペインによる儀式の音楽

 

 

 

 

 

 

●後半 「ゲロンティアスの夢」の解説 (音楽を交えた解説 約30分)

 

 

 

ニューマン ナイト神父、アリスの母の死 合唱の重要性(悪魔と聖霊)
曲の流れ
ゲロンティアスの夢(作品38) 

 

 

 

バルビローリとボールト 最近出たDVD

 

 

 

サー・ジョン・バルビローリ指揮、ハレ管弦楽団

 

 

 

第一部 終結部 トラック12 6:35
第二部 トラック12 120番付近 6:32
キーナンバー12について
1.リトルトンハウス校フランシス・リーブの話
2.バーミンガム音楽祭の委嘱。12使徒の作品を作曲しようとした
3.ゲロンティアスの夢へシフト その後1903「使徒たち」1906「神の国」「最後の審判」
4.12使徒 プロジェクトの痕跡
5.ブロック分けすると12

 

 

 

6.合唱が12部に分かれる12小節続く Godという言葉に合わせて始る

 

 

 

合唱12 神の存在の示唆 ダンテ交響曲
12声全部出る4小節(十字架?) 重要な言葉が重なる Jesus Crhistという言葉から始まる4小節

 

 

 

バッハのマタイでのユダの扱いを思わせる エルガーが音楽でゲロンティアスをキリスト者として認定

 

 

 

 

7.120番の神の一瞥(3つのハイA)120番ジャストの付点2分音符 fffZp アレルヤの下歌いはダメな理由 

 

 

 

クララ・バット サーシャ・クック アレルヤ終結から120番「神の一瞥」までジャスト12小節(118から120 審判の動機)

 

 

 

登場人物は声楽、神のという登場人物は明確に区分されている。管弦楽
8.序曲の中の12番 commital(引渡しの動機)司祭が歌うテーマ
  バッハ、モーツァルト、暗号好きのエルガー、大友直人、三枝成彰、バルビローリ盤のトラックナンバー

 

 

 

儀式の音楽 イニシエーション 交響曲第3番のフィナーレ

 

 

 

●演奏会の告知

 

 

 

エルガーのオラトリオ「ゲロンティアスの夢」は今年7月14日サントリーホール、7月15日ミューザ川崎シンフォニーホールで上演されます。ジョナサン・ノット指揮、東京交響楽団、テノールはマクシミリアン・シュミット、メゾ・ソプラノはサーシャ・クック、バリトンはクリストファー・モルトマン、合唱は東響コーラスです。

 

 

 

指揮者ノットはエルガーの故郷ウースター大聖堂聖歌隊出身。その意味でも極めて純度の高い「エルガー空間」になることは間違いありません。さらに今、日本で最も多くのエルガー作品を歌った経験のある東響コーラス。

 

 

 

1.1975年 山口貴指揮、日フィル、フィル唱

 

 

 

2.

 

 

 

3.1991年 国分誠指揮、アカデミー合唱団

 

 

 

4.1992年 リチャード・ヒコックス指揮、新日フィル、晋友会

 

 

 

5.2005年 大友直人指揮、東京交響楽団、東響コーラス

 

 

 

6.2018年 ジョナサン・ノット指揮、東京交響楽団

 

 

 

純粋に英国の指揮者としてはヒコックスに次いで2人目。

 

 

 

暗譜で歌う。キャサリン・ウィン・ロジャースが驚いていたエピソードを紹介。

 

 

 

チケットの申し込みや公演の詳細についてはウェブサイトでご確認ください。

 

 

 

それでは、ここからはエルガーの「ゲロンティアスの夢」をCDから全曲お聴きいただきます。

 

 

 

●「ゲロンティアスの夢」CD全曲(音楽約90分)

 

 

 

   サー・ジョン・バルビローリ指揮、ハレ管弦楽団、ハレ合唱団ほか

 

 

 

    デイム・ジャネット・ベイカー(MS)、リチャード・ルイス(T)、キム・ボルグ(B)

 

 

 

+〆の言葉+クッションミュージック(約10分)

 

 

 

11.エルガー/威風堂々第1番(作品39) 5:53

 

 

 

ノーマン・デル・マー指揮、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 
    ロンドン初演のエピソード、オルガンとタンバリン、高音から低音までのバランス最高の録音、臨場感、希望と栄光の国 吟遊詩人

 

収録した日は、雪が結構降って大変だった。収録当日に使った叩き台用のノート。まさか、4時間一人で番組を切り盛りしなければならないとは思わなかった。

 

 

ミュージックバードのラジオ収録のためにエルガーのゲロンティアスの夢の資料をまとめている段階でいろいろな発見がある。
こちらは偶然だとは思うが話が出来すぎだ。
ゲロンティアスの夢には12というキーナンバーが隠されているということを書いた。
第一部の終結で司祭の導きで12部に分かれた合唱が12小節続くという部分。
そして第二部の最後で魂となったゲロンティアスが神の姿を一瞬垣間見る瞬間である練習番号120番。
そこをラジオで解説しようとバルビローリ盤のトラックナンバーをチェックしたところ。
両部分ともトラックナンバーが12とは・・・・。

 

ミュージックバード/ウィークエンド・スペシャル/愛の音楽家エドワード・エルガー〜オラトリオ「ゲロンティアスの夢」

 

いよいよ7月14、15日、東京交響楽団演奏会、ジョナサン・ノット指揮によるエルガーの「ゲロンティアスの夢」。
5月に放送されたラジオ番組「ウィークエンドスペシャル」(ミュージックバード)
で私が解説したように、この作品はエルガーの最高傑作のひとつであり、とても深遠で巨大なスケールを秘めた作品である。
特に、作品に込められた12というキーナンバーは非常に暗示的でスピリチャルな要素があるように思う。
この12という数字に気づいたのは2000年の「ゲロンティアスの夢」作曲100周年記念にエルガー協会から発刊された「Best of me」に12のブロック分けについての解説が書かれていた。その解説書に書かれていたのはブロック分けについてのみで、その時は特に気にとめていなかった。
そして2005年に東京交響楽団で大友直人指揮による「ゲロンティアスの夢」演奏の際に、プログラムノート執筆の依頼をいただいた。その時にプログラムに書くために資料やら楽譜やらをあさっている時に、12という数字があちらこちらにあることに気がついた。
それが、第一部終盤にある司祭の言葉に導かれて合唱が12部に分かれて、それが12小節続くという12×12だった。
さらに核心部分である練習番号120番にも12という数字が隠れていそうだ・・・というところ。
ここまでが2005年の調査で発見したことだった。
そして、ミュージックバード出演用に今回の調査ではまたさらに多くの12を発見してしまったのである。
序曲の中にある練習番号12そのものが、12×12をモロに指し示していること。
さらに、核心部分120番近辺には非常に重要な意味合いを持つ3つのハイAの音がセットとしてあること(トリプルA)。
また、最初のハイA「アレルヤ」から神の一瞥のハイAの間がジャスト12小節であること。
のみならず13年前に発見していた12×12の中でも、司祭の発するキーワードに合わせて合唱が分かれることなど。
私にもっと神学的知識と楽典的知識があったなら、まだまだ他にもあるのではないかと感じている。
そしてもう一つついてきた12がある。これは本当に単なる偶然であるが・・・。
今回のラジオ番組で使用した音盤がバルビローリ盤であるのだが、合唱が12部に分かれる12×12が一枚目のCDの12トラック。
第二部の神の一瞥を挟む練習番号120番が二枚目CDのトラック12だった。
偶然とはいえ、ここまで12がついてくるとは・・・導きのようなものを感じてしまうのだ。

 

 

 

 

収録してきたミュージックバードの録音をチェックする。
番組のレジメを受け取った時に丸々4時間の番組をたった一人で全て切り盛りしなければならないということがわかり、これは話が持たない!と焦りまくり。
とにかく間を持たせねばと話題をたくさん用意して臨んでみたがフタを開けてみたら時間が全然足りなかった。
けっこうはしょった話題もあったりした。
それにしても自分の声を聴きとおすのは辛いものである。
プロのアナウンサーではないので、噛みまくりで明瞭でない言葉使い。リスナーさん聞きづらいだろうなと思う。
それでも案外やってみるとあっという間に終わってしまった印象だった。
あれも話し忘れたこれも言えなかった・・・などいろいろ出てくる。言葉の中でつまらないミスも発見したものの録り直しもできないしこのままオンエアするしかない・・・。
誰も気づかないことを祈るのみw。
それでもこれだけの情報量とエルガーへの溢れる愛は伝わると思う。
日本で唯一のショーファー奏者である私のショーファーの演奏も入っているので、これも初めての試みではないだろうか?
ゲロンティアスに関するキーナンバー12も今回新たに発見した案件も盛り込んであるので世界最新の情報といっても過言ではないと思う。
そもそも初歩的な疑問が出てきてしまったりもした。楽譜に書かれた練習番号って元来作曲者が書いているのか?という疑問。エルガーが書いたものとの前提で建てた仮説なので、もし出版社の編集者なりが番号を付していたら根底から説が揺らいでしまうという恐ろしい事態になってしまう。
で、今一度慌てて自筆譜を取り出し、エルガー自筆の番号を確認して一安心。
少しでも反響があるといいなと心から願っている。

 

 

ラジオ番組ミュージックバードでのエルガー特集では前半部分でエルガーの生涯と代表作品の紹介。後半で「ゲロンティアスの夢」の解説と全曲紹介という構成であった。
前半部分において交響曲第2番は第4楽章を紹介し、第3番でも第4楽章を取り上げた。
エルガーに少し詳しいリスナーならきっとここで疑問に感じると思う。
交響曲第2番なら、普通は壮麗豪華な第一楽章か泣き節カンタービレ満載の第二楽章を取り上げるべきだからだ。
一番地味で人気がない第4楽章を取り上げるとは何とヘソ曲がりか!と思われるかもしれない。
しかし、そうではない。第4楽章にこそ、作曲者の素の姿、本音が吐露されている。
泣き節の2楽章で観客を泣かせるのは容易いが、エルガーの真髄がこもっているが地味な第4楽章で観客を泣かせてこそ本物の演奏なのである。
そして、その後、紹介する交響曲第3番の第4楽章にも関係してくるので、ここではこの楽章を紹介するべきだった。
その交響曲第3番も、よりによって第4楽章を紹介するという偏屈ぶりにも反感を持つリスナーもいるだろう。
エルガーが書き残した部分は大体7割程度といわれている。しかし、大部分はピアノ譜による断片である。
楽章も順番も不明なものばかり。
エルガーがオーケストレーションまで完成させていたものは全体の2割くらいしかない。第1楽章の最初の方と第4楽章の冒頭のみ。
特に第4楽章は断片のメモすら残されていなかった。
なので第4楽章のほとんどはアンソニー・ペインの作曲部分なのである。
つまり普通に考えれば最もエルガーらしくない楽章だ。
それでも、あえて第4楽章でなくてはならない。
ラジオ番組の中でも解説しているのだが、この楽章は非常に重要な「儀式」の音楽なのである。
作曲者エルガー。エルガーの親友にして彼の存在なくして作品の完成はありえなかったほどの重要人物W・H・リード(ビリー)、そして補完者ペインの3人による儀式なのだ。
冒頭に登場するファンファーレ。これはエルガーが作曲した部分なのでこのテーマはエルガーその人である。
それに続く快活なテーマ。このテーマはこの作品の中で多用されているヴァイオリンの上昇ボウイングと、「荷馬車」のリズムに後押しされている。この2番目のテーマがペインを表している。
「荷馬車」とはエルガーの「子ども部屋」の中に組み込まれている「荷馬車が通る」という曲のリズム。このリズムが実は楽章全体の至るところに登場し、各テーマをつなぐ役目を果たす。ペインのインスピレーションで「荷馬車」を使ったわけであるが、これには理由がある。
エルガーとペインをつなぐ重要人物ビリーがとても愛していた曲だったから。つまり、ここでは「荷馬車」はビリーを表す。
そして、スケッチの段階でエルガーの作品「アーサー王」のテーマがこの楽章で使われている。もちろんこれもエルガーを表す。
これらのテーマがめまぐるしく登場し曲が展開して行く。
荷馬車が通過した後にアーサー王が颯爽と登場する場面など最高にかっこいい部分である。
終盤にさしかかると、なんと交響曲第2番での主要テーマであった「喜びの精霊」が登場する。この部分は交響曲第2番の第4楽章のフィナーレにそっくりなのだ。
つまりこのあたりは交響曲第2番第4楽章の終わりをペインがかなり意識して作曲したということになる。
そして、最後に曲が徐々にディミニエンドすると聞こえるのが第一楽章の主題。
これが静かに厳かに奏される。ここはヴォーンウィリアムズのロンドン交響曲に似ているかもしれない。
それも消え入り音が無くなる寸前、ドラが鳴らされる。ディナーミックはppp。
このドラの音が消える時がエルガーの生命が事切れる瞬間を描写している。
その瞬間、ビリーとペインの手によって完成された交響曲第3番をエルガーに返納する儀式が終了する。
交響曲第3番の第4楽章とはそういう音楽なのである。
なんと厳かで敬虔な音楽なのか。
第4楽章をして「これはエルガーの曲ではない」とか言っているリスナーは残念ながらエルガーの精神から最も遠いところに位置する存在だといえるだろう。そんな次元で論じているいる時点でもう話にならない。

 

5月27日に放送されるミュージックバードの放送曲目リストが発表されています。便宜上CD番号なども表記されています。
20:00:00 20:00ウィークエンド・スペシャル
20時台 <愛の音楽家エドワード・エルガー~最高傑作オラトリオ「ゲロンティアスの夢」解説> 出演:水越健一(日本エルガー協会代表)
・エルガー/子どもと魔法の杖第一組曲Op1aより「妖精と巨人」 
(3'18") サー・チャールズ・マッケラス指揮ウェールズ・ナショナル・オペラ管弦楽団
1990年録音
ARGO/POCL-1254
・エルガー/ミーナ
(4'51") リチャード・ヒコックス指揮ノーザン・シンフォニア・オブ・イングランド
1986年録音
HMV/5 72830 2
・エルガー/ポルカ・ネリー
(2'55") バリー・コレット指揮ルトランド・シンフォニア
1976年録音
BML/BML028
・エルガー/愛の挨拶 Op12
(3'54") サー・チャールズ・グローヴス指揮フィルハーモニア管弦楽団
1988年録音
DENON/CO-3534
・エルガー/雪 Op26-1
(5'42") リチャード・ヒコックス指揮ノーザン・シンフォニア&ロンドン交響楽団合唱団
1988年録音
EMI/CDC 7 49481 2
20:35
・エルガー/使徒たち Op49より 夜明け
(3'24") サー・エイドリアン・ボールト指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団&合唱団
1974年録音
CMS/7 64206 2
・エルガー/エニグマ変奏曲 Op36より ニムロド
(4'08") 尾高忠明指揮BBCウェールズ交響楽団
1997年録音
BBC/Vol3-No6
・エルガー/交響曲第2番 Op63より 第4楽章
(16'34") ブライデン・トムソン指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
2002年録音
Elgar Edition/EECD002
21時台 21:03
・エルガー/コンサート・アレグロ Op46
(11'49") デヴィッド・オウエン・ノリス(P)
1985年録音
Chandos/CHAN8452
・エルガー/ピアノ五重奏曲 Op84より 第2楽章
(12'54") シューベルト・アンサンブル
2010年録音
CHAMPS HILL/CHRCD027
・エルガー/希望と栄光の国
(2'41") エドワード・エルガー指揮ロンドン交響楽団
1931年モノーラル録音
EMI/TOCE-55971
・エルガー(補筆:ペイン)/交響曲第3番 Op88より 第4楽章
(16'07") 尾高忠明指揮NHK交響楽団
2011年録音
KING RECORDS/KKC-2114
22時台 22:11
・エルガー/オラトリオ「ゲロンティアスの夢」 Op38
(98'18") サー・ジョン・バルビローリ指揮ハレ管弦楽団&合唱団 デイム・ジャネット・ベイカー(Ms) リチャード・ルイス(T) キム・ボルグ(Bs) ほか
1964年録音
EMI/7 63185 2
・エルガー/威風堂々第1番 Op49
(5'52") ノーマン・デル・マー指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
2001年録音
DG/469 274-2

 

 

ミュージックバード出演のエルガー特集にて。ちょっとした心霊現象みたいなことも体験したんだった。あれ怖かった(゚o゚;;。放送局ってそういうの多いみたいだね。

ミュージックバードのゲロンティアス特集のラジオ収録の時に他の作品を色々紹介する中で「使徒たち」に関してショーファーの解説と実演をやった。
カトリックのエルガーがなぜユダヤ教のショーファーを「使徒たち」に使おうと思ったのかを知りたかった。
以前にカトリックの教会ではミサでショーファーを使うところがある・・・というような記述を目にしたことがあったので
おそらくエルガーが幼少の頃から通っていたウースターの聖ジョージ・ローマ・カトリック教会のミサでショーファーが使われることがあり、それをエルガーが目にしていたのだろうと思っていた。
ところがカトリック信者の友人に尋ねたところ、カトリックでショーファーが使われる例はあまりないらしいということがわかった。
むしろプロテスタントの教会で使われるケースの方が多いかもしれないということだった。
ということは、立てた仮説が崩れ去ったわけで1から出直しとなった。
マイケル・ケネディ、ジェロルド・ノースロップ・ムーアといった世界のエルガー研究者もあまり関心がないのか、この点を言及している資料が見つからない。
ごく表面的な解説しか見つからないのだ。
エルガーとプロテスタント。さらにはエルガーとユダヤ教。
ほとんど接点がないと思われていたつながりだ。
もちろん聖書にはショーファーのことと思われるラッパや角笛の記述はところどころにある。
エルガーはその点だけを抽出してイマジネーションだけで「使徒たち」に組み込んだのだろうか?
いや、絶対に違う。
なぜなら、テキアー、シェヴェリム、トゥルアーといったショーファーの正式な演奏法をそのまま「使徒たち」に使っている。
実物のショーファーを見聞きしない限りあのように作曲することは不可能だ。
エルガー本人に聞くのが一番早いのだがそれも不可能。
エルガーは作品には使わなかったエアオリアンハープも所有していた。
意外に変な楽器が好きだったりする。
もし彼が当時、ディジュリドゥを目にしていたらきっと関心を示したと思う。
ミュージックバード/ウィークエンド・スペシャル/愛の音楽家エドワード・エルガー〜オラトリオ「ゲロンティアスの夢」ミュージックバード/ウィークエンド・スペシャル/愛の音楽家エドワード・エルガー〜オラトリオ「ゲロンティアスの夢」

ミュージックバード/ウィークエンド・スペシャル/愛の音楽家エドワード・エルガー〜オラトリオ「ゲロンティアスの夢」

このエントリーをはてなブックマークに追加

愛の音楽家エドワード・エルガー電子書籍はこちらからどうぞ

ミュージックバード/ウィークエンド・スペシャル/愛の音楽家エドワード・エルガー〜オラトリオ「ゲロンティアスの夢」

エドワード・エルガー 希望と栄光の国

ミュージックバード/ウィークエンド・スペシャル/愛の音楽家エドワード・エルガー〜オラトリオ「ゲロンティアスの夢」

愛の音楽家 エドワード・エルガー

関連ページ

ゲロンティアスの夢 隠された数字12
【作品紹介2】ゲロンティアスの夢(The Dream of Gerontius, op. 38)》
大友/東響のゲロンティアス
思い出のエルガー・コンサートへのタイムスリップ 東京交響楽団 大友直人プロデュース 東芸シリーズ第79回
BBC開局75周年記念の《ゲロンティアスの夢》DVD
英国の作曲家エドワード・エルガーの人生や作品を詳しく解説した同名の書籍のウエブサイト版。《ゲロンティアスの夢(The Dream of Gerontius, op. 38)》BBC開局75周年記念の《ゲロンティアスの夢》DVD
ジョナサン・ノット指揮ゲロンティアス
英国の作曲家エドワード・エルガーの人生や作品を詳しく解説した同名の書籍のウエブサイト版。《ゲロンティアスの夢(The Dream of Gerontius, op. 38)》
ゲロンティアスの夢ベスト演奏について
英国の作曲家エドワード・エルガーの人生や作品を詳しく解説した同名の書籍のウエブサイト版。《ゲロンティアスの夢(The Dream of Gerontius, op. 38)》
マクリーシュのゲロンティアス
英国の作曲家エドワード・エルガーの人生や作品を詳しく解説した同名の書籍のウエブサイト版。《ゲロンティアスの夢(The Dream of Gerontius, op. 38)》
ローマ・カトリック総本山のゲロンティアス
英国の作曲家エドワード・エルガーの人生や作品を詳しく解説した同名の書籍のウエブサイト版。《ゲロンティアスの夢(The Dream of Gerontius, op. 38)》
ゲロンティアスの夢ディスコグラフィ
英国の作曲家エドワード・エルガーの人生や作品を詳しく解説した同名の書籍のウエブサイト版。《ゲロンティアスの夢(The Dream of Gerontius, op. 38)》

ホーム RSS購読 サイトマップ

先頭へ戻る