新しい風

愛の音楽家エドワード・エルガー

新しい風

 

 

 第1次世界大戦が終わり1920年代になると世界の音楽界も変革を迫られるようになる。ストラヴィンスキー、ドビュッシー、シェーンベルグらの新しいスタイルが流入し英国音楽界にも強い影響を与えた。アーノルド・バックス、アーサー・ブリス、ウィリアム・ウォルトンといった作曲家がそのモダニズムやフランス・スタイルなどに刺激を受けた作品を次々と発表し大評判となり、徐々に不協和音的な音楽が主流となりつつあった。そんな中でエルガーの作品は「時代遅れ」というイメージがますます強くなり、前時代の最後の生き残りを思わせるような存在になってしまった。コンスタント・ランバートは語っている。「彼の作品は、別にそれ自体に欠陥があるわけではないのだが、我々の世代からすると、妙に耐え難い雰囲気に満ちている」
 そんな風潮の中、1923年4月エルガー65歳の時、寂しくロンドンを去りウースター、ケンプシーの「ナプレトン・グランジ」へ転居する。それでもエルガーの栄誉は続き同年勲爵位(K.C.V.O.)を授かり、1924年の67歳の時には王室音楽主任に任じられている。
 この頃の目立った作曲活動としては1924年にウェンブリー・スタジアムで開かれた帝国博覧会のための作品がある。博覧会のために作曲を依頼されたエルガーは、《Pageant of Empireペイジェント・オブ・エンパイア(帝国の大祭典)》を作曲する。これは同イヴェントのために書かれた8つの歌曲から成る組曲で、同時に《帝国行進曲》も作曲。今日では、こちらの《帝国行進曲》が単独で演奏されることが多い。しかし国王ジョージ5世は、合唱曲《希望と栄光の国》の演奏を強く希望し、それを押し通してしまう。エルガーにとっては神経を逆なでされるような思いであった。この頃エルガーの王室に対する批判的な言葉が多く聞かれるようになる。

 

動画はページェントオブエンパイアの中からブルーマウンテン

 

〔参考CD〕
* 《帝国行進曲》(エルガーによるオリジナル版) ボストック指揮/ミュンヘン響 
Amazon.comの短縮URL http://tinyurl.com/5rmn63
エルガーによるオリジナルと一般に演奏されるスタイルの違いは主にオーケストレイション上のもの。エルガー版では最後に鐘の音が入る。中間部に《ペイジェント・オブ・エンパイア(帝国の大祭典)》の「連合の歌」のメロディが現れる。
* 《ペイジェント・オブ・エンパイア(帝国の大祭典)》から「西方への航海」「不滅の伝説」 コレット指揮/チューダー合唱団ほか「The Unknown Elgar」 
 《ペイジェント・オブ・エンパイア(帝国の大祭典)》は「シェイクスピアの国(Shakespeare's Kingdom)」「島(The Islands)」「ブルー・マウンテン(Blue Mountains)」「カナダの心(The Heart of Canada)」「西方への航海(Sailing Westward)」「商人の冒険(Merchant Adventurers)」「不滅の伝説(The Immortal Legions)」「連合の歌(A Song of Union)」の8曲からなる組曲で、現在総譜は大部分失われている(ピアノ伴奏譜のみ現存)。
Amazon.comの短縮URL http://tinyurl.com/6rkokl

失意      電気録音

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