言葉と音で解き明かすエニグマ――ウィグルズワースが描くエルガーの肖像
首席指揮者マーク・ウィグルズワースがボーンマス交響楽団に復帰し、エドワード・エルガーの《オリジナル主題による変奏曲(エニグマ変奏曲)》を、独自の視点から提示する注目の公演である。
この作品は、エルガーの友人や家族、身近な人々をモデルにした音楽的肖像画の連作として知られる。各変奏は単なる性格描写にとどまらず、親密な記憶や感情の層を織り込みながら、聴き手の前に豊かな人間ドラマを展開する。ユーモアと愛情、そして時に深い内省が交錯するこの作品に、エルガーならではの旋律美と和声感覚が凝縮されている。
今回の上演が特別なのは、音楽だけにとどまらない点にある。ウィグルズワース自身が編纂したエルガーの文章の抜粋を、俳優ウォルター・ヴァン・ダイクが朗読し、各変奏の背後にある人物像やエルガーの思索を浮かび上がらせる。音と言葉が交錯することで、この作品の“謎(エニグマ)”に新たな光が当てられる構成となっている。この映像では終曲EDUのみであるが、全体の雰囲気もかなり良いものであることが想像できる。
収録は2025年2月26日、イギリス・プールのライトハウス(プール)で行われ、BSOデジタル・コンサート・シーズンの一環として制作された。ライブならではの緊張感と臨場感を保ちながら、視覚と聴覚の両面から作品に迫る内容となっている。
単なる名曲の再現ではなく、エルガーという人間の内面に踏み込む試み——この公演は、《エニグマ変奏曲》を「音楽」としてだけでなく、「語られる物語」として再体験させるものと言えるだろう。




