愛の音楽家エドワード・エルガー

ジェラルド・ノースロップ・ムーアによるエルガー写真集

研究のために集めたエルガー関連の資料の中で、私がいちばん愛着を持っているのは、ジェラルド・ノースロップ・ムーアによる写真集である。音楽研究者が写真集をコレクションするというのは、いささか異色に映るかもしれない。例えば、ベートーヴェンのファンがどれほど多くとも、「ベートーヴェンの写真集」を進んで買うだろうか、と考えると、思わず可笑しくなる。もしあなたがアルバン・ベルクの熱心な支持者だとして、ベルクの写真集が出版されたとしても、果たして手に取るだろうか――そんな問いも浮かぶ。

 

 しかし、この写真集には、単なる肖像写真の羅列以上の価値がある。収録されている画像の多くは非常にレアで、私は研究者として、世に存在するほぼ全てのエルガー写真に目を通したつもりでいるにもかかわらず、ここでしか見たことのない写真がいくつもあるのだ。

 

 その一例が、1920年に撮影されたセント・ウルスタン教会のエルガーの墓所の写真である。エルガーは1934年に没しているので、当然ながらこの時点では墓石にまだ彼の名前は刻まれていない。墓に入っているのは妻アリスのみであり、その状況を写した写真は他に例を知らない。こうした時代限定の証拠写真は、歴史資料として比類のない価値を持つ。

 

 もう一枚、私が長年心に留めている写真がある。それはエルガーが歩いている連続写真だ。これは明らかに映像からコマ撮りされたものであり、静止画として存在しているということは、かつてフィルムが撮影されていたことを意味する。厳密に言えば、私はそのフィルムを一度だけ視認したことがある。しかし、その映像がどこから来たものなのか、出所が不明のままなのである。この写真の出所――つまりフィルムそのもの――を私は何十年も探し続けている。

 

 もし、この原資料について何か心当たりのある方がいらっしゃれば、ぜひご一報いただきたい。単なるレア資料の発見を超えて、エルガーという人物の生身の姿に触れられる可能性がそこにはあるのだ。

 

写真は、顔や身体を写すだけではない。
音楽家の時間・環境・生き方・息遣いを、かろうじて伝える〈もう一つの筆跡〉なのである。

 

 

ジェラルド・ノースロップ・ムーアによるエルガー写真集

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