《ゲロンティアスの夢(The Dream of Gerontius, op. 38)》

因縁の地に甦る霊的劇 ― ブラビンズ&“ザ・コーラル”による2025年《ゲロンティアスの夢》

マーティン・ブラビンズ指揮、オペラ・ノース管、そして伝統のハダースフィールド・コーラル・ソサエティによる2025年録音の《ゲロンティアスの夢》は、単なる新譜ではなく、“作品・土地・歴史”が三位一体となった特異なプロジェクトである。録音場所はハダースフィールド・タウンホール。ここはエルガーが1917年に第一次世界大戦下で《ゲロンティアス》を自ら指揮した、まさに“血の記憶”が刻まれた場所であり、今回の録音はその霊的文脈に直接触れる希有な位置にある。

 

ブラビンズは近年、英国指揮者の中でもとりわけ“現代的エルガー解釈”の旗手として頭角を現してきた。過去のBBCスコティッシュ響、ENGLISH NATIONAL OPERAでのエルガー演奏でも一貫して、過度な感傷を排し、構築性と語りの明晰さを重視する姿勢を示してきた。

 

総じて、本録音は“現代的解釈”と“歴史的伝承”が緊密に融合した、きわめて稀有な《ゲロンティアスの夢》である。ブラビンズの知的構築性、歌手陣の質の高さ、そしてハダースフィールド・コーラル・ソサエティの“宿命的存在感”が交錯し、作品に宿る霊性を21世紀的に再生した意義深い記録である。これは単なる新録音ではなく、エルガー演奏史の文脈に新たな層を刻む「出来事」であると言ってよい。

 

 

 

THE CHORAL | Official Trailer (2025)

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