エルガーと彼を巡る女性たちとの音楽

エルガーとミレイ

ラファエル前派展が来日した折に出かけてきた。
お目当てはもちろん、ジョン・エヴァレット・ミレイ。
もちろんエルガーつながりなのは言うまでもない。
今回エルガーにゆかりの深い作品含まれていなかったが、相変わらず繊細で印象的なラファエル前派の画家たちの作風には感銘を受ける。
エルガーとミレイ本人とは直接のつながりはない。
しかしミレイの娘のアリス・ストュワートは、のちのエルガーの創作に強い影響を与える存在となり、エルガーと彼女は生涯強い友情と愛情によって結ばれた存在であった。
ミレイの母親であるエフィーは元はジョン・ラスキンの妻であった。つまりミレイはラスキンの奥さんを略奪してしったということで、当時は大スキャンダルになった。
つまり、アリスはミレイの娘であり、同時にラスキンの元奥さんの娘でもあるのだ。
エルガーは彼女のことをウィンドフラワーと呼んでいた。
エルガーとウィンドフラワーが初めて会ったのは1902年。
ミレイが没したのは1896年なのでタッチの差でエルガーとミレイは顔を合わせることなかった。
しかしエルガーはミレイの作品のファンでもあった。
ミレイの作品の中でエルガーが一番好きだった絵画が犬の描かれているもの。
おそらく動物好きのエルガーゆえ、犬が描かれているのが気に入っていたようだ。描かれている犬の表情があまりにも生き生きとしているのでハッとさせられる作品である。

エルガーとミレイ

次に、ミレイの3人娘の絵。
ウィンドフラワーは一番右の少女である。

エルガーとミレイ

そして、成長したウィンドフラワーの肖像。
気品あふれる上品さが漂っている。

エルガーとミレイ

エルガーとラファエル前派のつながり

エドワード・エルガーとラファエル前派との関係は、彼の音楽的創作や人間関係を通じて多面的に見られる。以下に、エルガーとラファエル前派のつながりについて。

 

1. アリス・スチュアート・ウァートリー(「ウィンドフラワー」)との関係

エルガーとラファエル前派の最も直接的なつながりは、画家ジョン・エヴァレット・ミレイの娘であるアリス・スチュアート・ウァートリーとの関係にある。彼女はエルガーの親しい友人であり、創作のインスピレーションの源でもあった。エルガーは彼女を「ウィンドフラワー(Windflower)」と呼び、1910年のヴァイオリン協奏曲には彼女の影響が濃厚に存在すると言われる 。

 

2. ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティとの文学的影響

エルガーは、ラファエル前派の詩人であり画家でもあるダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの作品からも影響を受けた。ロセッティのイタリア詩の翻訳は、エルガーの歌曲「Go, song of mine」の歌詞として用いられている 。
Elgar, Edward. (1857 - 1934) "Go, Song of Mine," SIGNED ...

 

3. ジョン・ヘンリー・ニューマンの肖像画と「ゲロンティアスの夢」

エルガーの代表作「ゲロンティアスの夢」は、ジョン・ヘンリー・ニューマンの詩に基づいている。エルガーは、ミレイが描いたニューマンの肖像画の版画をアリスから贈られ、自宅に飾っていた 。

 

4. 中世的・騎士道的主題への共鳴

エルガーとラファエル前派は、中世の騎士道や伝説的な主題への関心を共有してた。エルガーは、1897年の「聖ジョージの旗」や1923年の劇音楽「アーサー」など、騎士道的な題材を取り上げてる。これは、ラファエル前派の画家たちが中世の物語や伝説を好んで描いたことと共通している 。

 

5. クリスティーナ・ロセッティの詩の音楽化

エルガーは、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの妹である詩人クリスティーナ・ロセッティの詩「A Song of Flight」を1895年に歌曲として作曲している。これは、ラファエル前派の文学的側面とのつながりを示している 。

これらの点から、エルガーはラファエル前派の芸術家たちとの直接的な交流は少なかったものの、彼らの芸術や思想から多大な影響を受けていたことがわかる。エルガーの作品には、ラファエル前派の美学や主題への共鳴が随所に見られる。

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