《交響曲第3番(Symphony No.3, op. 88)》

ゲロンティアスと交響曲3番の儀式性について

《ゲロンティアスの夢》と交響曲第3番、とりわけ第4楽章は、いずれも儀式として構築された音楽である。
そして《ゲロンティアスの夢》に内在するこの儀式性にいち早く気づいたアンソニー・ペインは、交響曲第3番補完に際し、その儀式のエッセンスを意識的に注入した――そう結論づけることができる。

 

 

【ゲロンティアスの夢】

 

儀式参加者

 

 ゲロンティアス

 

 友人たち

 

 司祭

 

 天使

 

 聖霊

 

 苦悶の天使

 

隠れキャラクター

 

 イエス・キリスト(練習番号100番)

 

 創造主(練習番号120番)

 

 アーサー・サリヴァン(隠れ非献呈者)

 

 

儀式の趣旨

 

この作品は、死を迎えた一人の人間ゲロンティアスを、キリスト者として正式に認定し、天界へ導くための通過儀礼である。
単なる死後描写ではなく、「通行許可」を得るための段階的儀式が厳密に設計されている。

 

その通行手形がキーナンバー12である。
各関所で扉を開くための暗証番号のように、12という数字が要所で機能する。
この数字はエルガーにとって、信仰上きわめて重要な象徴であり、構造的にも神学的にも中核を成している。

 

アングル作者

 

エドワード・エルガー。
ゲロンティアスは彼自身の投影であるが、同時に、ゲロンティアスを「キリスト者として認定する権限」を持つ存在もまたエルガー自身である。
作曲家は、当事者であると同時に司式者でもある。

 

 

 

【交響曲第3番 第4楽章】

 

儀式参加者

 

 エドワード・エルガー

 

 アンソニー・ペイン

 

 ウィリアム・ヘンリー・リード

 

儀式の趣旨

 

未完に終わったエルガーの交響曲第3番を、
ウィリアム・ヘンリー・リード(ビリー)の記憶と資料を媒介に、アンソニー・ペインが完成させ、
最終的にその作品をエルガーへ奉納するための儀式である。

 

楽曲の最後に、ほとんど儀礼音のように静かに鳴らされるドラの一打は、
終止ではなく奉納の合図であり、作曲家の霊を呼び戻し、送り返すための音である。

 

第4楽章における配役テーマ

 

 冒頭ファンファーレ = エルガー

 

 アーサー王のテーマ = ペイン

 

 荷馬車のリズム = ビリー

 

ここでは音楽的素材そのものが「人格」を帯び、
三者がそれぞれの役割を担って儀式に参加している。

 

アングル作者

 

アンソニー・ペイン。
ただし彼は作曲家ではなく、儀式の設計者であり司会者である。
エルガーの声を代弁するのではなく、
エルガーが「完成された作品を受け取る場」を用意したに過ぎない。

 

 

 

《ゲロンティアスの夢》が示したのは、
音楽によって魂を移行させるための、徹底して構造化された儀式だった。

 

アンソニー・ペインは、この本質を見抜いた。
だから彼は交響曲第3番を「完成させた」のではない。
完成という行為そのものを、儀式として設計したのである。

 

第4楽章は音楽である以前に、
エルガーを呼び、名を呼び、作品を返却するための場である。
そこに《ゲロンティアスの夢》の儀式性が流れ込んでいるのは、必然だった。

 

これは補筆ではない。
継承された儀式である。

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