ゲロンティアスと交響曲3番の儀式性について
《ゲロンティアスの夢》と交響曲第3番、とりわけ第4楽章は、いずれも儀式として構築された音楽である。
そして《ゲロンティアスの夢》に内在するこの儀式性にいち早く気づいたアンソニー・ペインは、交響曲第3番補完に際し、その儀式のエッセンスを意識的に注入した――そう結論づけることができる。
【ゲロンティアスの夢】
儀式参加者
ゲロンティアス
友人たち
司祭
天使
聖霊
苦悶の天使
隠れキャラクター
イエス・キリスト(練習番号100番)
創造主(練習番号120番)
アーサー・サリヴァン(隠れ非献呈者)
儀式の趣旨
この作品は、死を迎えた一人の人間ゲロンティアスを、キリスト者として正式に認定し、天界へ導くための通過儀礼である。
単なる死後描写ではなく、「通行許可」を得るための段階的儀式が厳密に設計されている。
その通行手形がキーナンバー12である。
各関所で扉を開くための暗証番号のように、12という数字が要所で機能する。
この数字はエルガーにとって、信仰上きわめて重要な象徴であり、構造的にも神学的にも中核を成している。
アングル作者
エドワード・エルガー。
ゲロンティアスは彼自身の投影であるが、同時に、ゲロンティアスを「キリスト者として認定する権限」を持つ存在もまたエルガー自身である。
作曲家は、当事者であると同時に司式者でもある。
【交響曲第3番 第4楽章】
儀式参加者
エドワード・エルガー
アンソニー・ペイン
ウィリアム・ヘンリー・リード
儀式の趣旨
未完に終わったエルガーの交響曲第3番を、
ウィリアム・ヘンリー・リード(ビリー)の記憶と資料を媒介に、アンソニー・ペインが完成させ、
最終的にその作品をエルガーへ奉納するための儀式である。
楽曲の最後に、ほとんど儀礼音のように静かに鳴らされるドラの一打は、
終止ではなく奉納の合図であり、作曲家の霊を呼び戻し、送り返すための音である。
第4楽章における配役テーマ
冒頭ファンファーレ = エルガー
アーサー王のテーマ = ペイン
荷馬車のリズム = ビリー
ここでは音楽的素材そのものが「人格」を帯び、
三者がそれぞれの役割を担って儀式に参加している。
アングル作者
アンソニー・ペイン。
ただし彼は作曲家ではなく、儀式の設計者であり司会者である。
エルガーの声を代弁するのではなく、
エルガーが「完成された作品を受け取る場」を用意したに過ぎない。
《ゲロンティアスの夢》が示したのは、
音楽によって魂を移行させるための、徹底して構造化された儀式だった。
アンソニー・ペインは、この本質を見抜いた。
だから彼は交響曲第3番を「完成させた」のではない。
完成という行為そのものを、儀式として設計したのである。
第4楽章は音楽である以前に、
エルガーを呼び、名を呼び、作品を返却するための場である。
そこに《ゲロンティアスの夢》の儀式性が流れ込んでいるのは、必然だった。
これは補筆ではない。
継承された儀式である。


