ウッド・マジック・・・最大の悲しみ

宮田大のエルガーコンチェルト

宮田大(Dai Miyata)のエルガー《チェロ協奏曲 ホ短調 作品85》演奏は、単なる技術以上の“心”が込められた名演である。以下、その魅力を解説する。

 

🌟 深い内省と高貴さの融合

冒頭のカデンツァは、宮田が“逡巡ゼロ”で始める重厚な重音から立ち上がり、深い“呼吸感”とともに広大な響きを展開する。感情の爆発ではなく、nobilmente(高貴に)という楽譜の指示に忠実でありながら、響きの奥底にしみいるような深みが感じられる

 

 

🎻 楽譜への誠実な取り組み

ヴィブラートを抑えた表現や和声の透明感は、「情念の噴出」ではなく、「高貴な挽歌」としての演奏を目指す宮田の明確な意志を示す。冒頭からの「重音の響きで始まるJ.S.バッハ」を想起させる構築性には、エルガー作品への深い敬意と研究が窺える。

 

 

🌌 第2楽章~第3楽章の抒情と清明さ

第2楽章では楽章冒頭の疾走感と透明な明晰さが両立し、まるで宮田自身の内面世界を静かに描き出す官能を感じさせる。一方、第3楽章ではその“高貴な歌謡性”を存分に発揮し、チェロとオケの対話が緻密に織り込まれている。

 

 

🤝 指揮ダウスゴー&BBCスコティッシュ響との理想的共演

特筆すべきは、トーマス・ダウスゴー率いるBBCスコティッシュ響との緻密なアンサンブル。終楽章ではチェロに寄り添いつつ爆発的なエネルギーで応える演奏で、まさに“室内楽的協奏曲”としての理想を実現している

 

 

🌠 評価と受賞歴

この録音は、ドイツの栄誉あるOpus Klassik 2021を獲得。国際的な評価も高く、「新時代の名演」として国内外で高く評価されている

 

 

 

宮田大による《エルガーチェロ協奏曲》は、以下の要素により歴史的名盤に匹敵する新たな名演として位置付けられる。

 

楽譜指示に忠実ながら内面表現に富む高貴な音色

 

楽譜を深く読み解いた説得力ある構築性

 

オケとの一体感ある響きの統一

 

国際的にも認められた評価

 

特に感嘆すべきは、**“心ある表現”と“形式の堅実さ”**を絶妙に両立させ、「エルガー作品の本質を21世紀に再解釈した」演奏である点だ。ジャクリーヌ・デュ・プレの影を超え、楽譜に秘められた気高さを明確に立たせたこの演奏は、まさに今日の「本物のエルガー者」と言える一枚である。

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