愛の音楽家エドワード・エルガー

エルガーの主題によるワルツ

エルガーが作曲の時によく使っていたスケッチブックがある。彼はこのスケッチブックをシェッドと呼んでいた。そこに彼が色んな断片を書き込み、後に取り出して作品に仕上げていた。その中で使われていない未発表のものをクリストファー・ポリーブランクが一曲のワルツに仕上げた。それを譲り受けたヴァイオリストのビゼンガリエフが世界初演を行いレコーディングを行ってCDもリリースされたのである。
そこで、ぜひ、この曲を日本での演奏での許可をもらおうと思ってビゼンガリエフにコンタクトしてポリーブランクへの連絡先を教えてもらうとう思ったのだ。しかしビゼンガリエフも彼の消息はわからないというとのことだった。ビゼンガリエフの話では、ポリーブランク自身も当時かなりの年齢で体調を悪くしていたので存命かどうかもわからないとのことであった。作品自体の著作権もどこの団体にも委託していないようであった。
その後ポリーブランクの消息を掴むことに成功して連絡をしてみた。しかし、代理人を通じてこの作品はビゼンガリエフのために作曲したものなのでそれ以外での使用はNGとの返答だった・・・・。
残念であるが、唯一残っている録音がかえってなんと神々しく聞こえるのであろうか。
写真はビゼンガリエフから譲り受けた楽譜。

 

エルガーの主題によるワルツ

 

1886年のイースターに作曲

エルガーのテーマによるワルツ。
20年程前にblackboxからリリースされたマラト・ビゼンガリエフの演奏で録音された小品である。
エルガーは、頭に浮かんだ曲の断片を、彼がShadsと呼んだスケッチブックに書き留め、作曲の際にはしばしば、その中から題材を選び作品として仕上げていたとされる。
その中にある未発表のワルツを、クリストファー・ポリーブランクが3分ほどの小品へと仕上げた。出版もされていないようで、ビゼンガリエフはポリーブランクから直接楽譜を書き下ろしてもらったものだそうだ。
シンプルで軽い曲であるが、エルガーらしい優しさと温かさに包まれた幸福な曲想である。エルガーが、この手のワルツとかポルカを作曲することは非常に珍しく、おそらくポウィック病院時代のセラピー音楽として使用するつもりで最初に思いついたのではないだろうかと想像する。
ビゼンガリエフの2枚のアルバムの中では一番のお気に入りだった。モロに心に刺さるものがあり紛れもなくエルガーの音楽であると確信できる。かつて、「レコ芸」の「海外盤試聴記」でこのディスクを紹介したのだが、勿論特選盤として推薦したものだった。その後ビゼンガリエフ以外の録音も登場することもなくblackbox自体もいつのまにか消滅していた。幸いなことにナクソスが利権を引き継いで今日現役盤として存在しているのは幸いである。
ずっと気になっていたこの曲のスコアを探していたのだが出版されていない以上入手は困難なのは当然だった。ダメ元でビゼンガリエフ本人に問い合わせてみたところ何と楽譜を譲っていただけた。
そして、タイトルの下の部分に書かれている一文は、非常に感慨深い。
1886年のイースターに作曲したとある。おそらくスケッチブックにエルガーが書きしるしたものをポリーブランクがそこに付したのだろう。
1886年、エルガーは後に妻となるアリス・ロバート嬢に出会った。グレートモールヴァンのチャーチストリートに今でもあるセント・セシーリアホールで二人は出会った。そこでエルガーがピアノとヴァイオリンを教える教室を持っており、アリスはその門を叩いた。
その運命的な出会いがこの曲の、これほどまでに甘美で幸福なメロディへと昇華したのではないかと思いたくなる。実際には少し時期が異なるが。
エルガーの場合、そういうミューズとの出会いがストレートに作品に昇華する例が他にもたくさんあるからである。
ミューズとの出会いこそ彼の作品創造の原動力となったことは広く知られている。

 

エルガーの主題によるワルツ

エルガーの主題によるワルツ

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